義足に関する体験授業を受けた小学生の8割強が、授業後に障がいのある人をより身近に感じたことが、民間企業の調査で明らかとなった。また、東京パラリンピックについて本やネットで調べるなど、児童の過半数が授業後に何らかの行動を起こした。授業を通して〈障がいのある人が自分と変わらない、壁を作る必要がない〉ことに児童が気付き、自分たちができることから行動に移す態度変容がみられ、『心のユニバーサルデザイン』が進んだことがみえてきた。
この調査結果を公表したのは、建築材料・住宅設備機器業界最大手の企業のリクシル。東京2020ゴールドパートナーにもなっている。同社では、2017年4月から全国の小学5・6年生を対象に、「ユニバーサル・ラン〈義足体験授業〉」を実施し、これまで220校1万5721名の児童が参加した。スポーツ義足の体験と座学を通じ、義足を使いこなすことの難しさを体験したり、義足使用者のリアルな経験談に触れることで、子どもたちに多様性への理解を深めることを目的として、活動を継続してきた。
同活動が3年目を迎えたことから、これまでの活動を総括するために、同授業を受けた児童を対象としたアンケート調査を実施。児童3298名らから回答があった。
□障がいのある人を〝身近に感じる〟児童は体験後80.9%に増加
授業を受ける前、障がいのある人をどのくらい身近に感じていたかを5点満点で聞いてみると、満点の5点が9.5%、次点の4点が15.6%となり、〝身近に感じる(5~4点)〟と答えた児童は21.1%一方、2点29.2%、1点11.9%と〝身近に感じない(2~1点)〟と回答した児童は41.1%で、〝身近に感じない〟児童が多い結果となった。
授業を受けた後は、5点が41.9%と4割強を占め、39.0%の4点を合わせると、8割以上の児童が身近に感じるようになったことが明らかとなった。
□授業の前後の変化をみると、約8割の児童が〝障がいのある人を身近に感じる度合い〟が上昇
授業を受ける前と後での〝身近に感じる度合い〟の変化をみると、「プラス1点」が最も多く34.3%、次いで「プラス2点」が31.3%で、それぞれ3割を超えた。また、「プラス3点」(10.2%)、「プラス4点」(2.5%)が続き、授業後に〝身近に感じる度合い〟が上昇した児童は約8割にのぼった。体験授業を受ける前後での変化の度合いは児童それぞれだが、大半の児童の『心のユニバーサルデザイン』が進んだことが分かった。
□7割以上の児童が「義足で歩くことの大変さ」「障がいのある人の大変さ」を実感
体験授業で感じたことの上位は「義足で歩くことの大変さ」(73.1%)、「障がいがある人の大変さ」(70.0%)で〝義足〟や〝障がい〟への理解が進んだ児童が7割以上となった。「努力することの大切さ」「バリアフリーやユニバーサルデザインの大切さ」「他の人を思いやる気持ち」も59.9%、54.5%、44.9%と続く。また、「障がい者もみんなとあまり変わらない」も4割を上回った。
□授業後、過半数の児童が行動を起こす
授業を受けて意識が変化しただけでなく、実際に行動につなげられたのか、具体的にどのような行動をとったのか、行動の変化も調査した。授業を受けた後に実行したこととして、最も多かったのは「東京2020パラリンピックや選手について本やインターネットで調べた」で、34.0%。以下、「ユニバーサルデザインなどについて気にかけるようになった」(16.4%)、「障がい者スポーツに参加したり体験したりした」(9.7%)の順。「実行していない」も41.4%と少なくなかったが、何かしら実行している児童は合わせて55.7%と半数を超える結果となった。