情報・システム研究機構国立極地研究所の自見直人日本学術振興会特別研究員と東邦大学理学部の多留聖典訪問研究員らの研究グループは、東京都港区のお台場海浜公園において新種のゴカイを発見した。このゴカイは生物の死体から限定して発見されていることから、腐肉食性で〝海の掃除屋〟として機能して、東京湾の生態系の維持に重要な役割を担っていると考えられる。
両研究員は東京港水中生物研究会に参加しており、同会では1996年にお台場海浜公園で潜水調査を開始し、現在では毎月海底清掃や底生生物相の調査を行い、観察された動物だけでも275種に及ぶという。
東京湾の湾奥部は、かつては広大な河口や干潟が広がっていたが、ほとんどが埋め立てられ、現在では三番瀬など数か所を残すだけとなっている。東京港周辺は護岸されており、水質の悪さもあいまって見られる生き物は限られていたが、1970年代に自然海岸を模した砂浜と磯浜が台場地区に「お台場海浜公園」として造成され、多くの生物が観察されるようになった。
東京お台場という都会にも、まだ知られていない生き物がいることが明らかになったことを踏まえ、研究会では、「人間社会に大きな利益をもたらす生物多様性を守っていくためにも、どこにどのような生物がいるかを把握することは最優先の課題」との考えを示している。
さらに、調査地が今年開催予定のオリンピック会場予定地のため、研究会の定期調査は当面の間、休止となるが、「今後も分類学的研究を各地で継続し生物相の把握に貢献していく」としている。