順天堂大学大学院スポーツ健康科学研究科女性スポーツ研究センターは、成長期の女子アスリートの身体づくりをサポートするアプリ『スラリマッスル』を開発し、2月27日に公開する。成長期の女子アスリートは〝生きるため・生活するためのエネルギー〟〝発育・発達のためのエネルギー〟に加え、〝運動で使うエネルギー〟が必要。しかし、過度な運動により大量のエネルギーを消費すると、自分では気づかないうちに〝発育・発達のためのエネルギー〟が不足してしまい、低身長、貧血、無月経、疲労骨折など、女性アスリート特有の健康問題が生じやすくなることがわかっている。今回開発したアプリ『スラリマッスル』では、成長期の身体づくりのポイントとなる「除脂肪体重=LBM」に着目。成長期の女子アスリートにLBMを通した成長・コンディション管理を提案する。
身長と相関する「LBM」
アスリートにとって身長の高さや体格の大きさは有利に働きやすく、特に国際的なアスリートを目指す上では競技力向上に欠かせない要素。一般的に子供の身長の伸びは、両親からの遺伝の影響が大きいと言われているが、成長期の過ごし方によっては、両親の身長から予測される「到達予測身長」よりも子供の身長がさらに高くなる可能性があることが明らかになっている。
また、この成長期の身長の伸びと、LBMの増加は相関することが最近の研究から明らかになっており、成長ピークに十分背を伸ばすには、「適度な運動」「十分な食事」「質の良い睡眠」に加え、LBMが身長の伸びに応じて増えているかを把握し、著しく伸長が伸びる期間である〝成長スパート〟に入ったことを見逃さないことが極めて重要とされている。
わが国ではこれまで、アスリートのコンディションは体重や体脂肪率の管理によって評価されてきたが、それでは大切な筋肉まで落とすことになりかねない。成長期の女子アスリートが、身長が伸びているにもかかわらずLBMの増加がない時、それは〝エネルギー不足〟の可能性を意味する。競技パフォーマンス向上やエネルギー不足によるさまざまなリスクを減らすためにも、LBMに注目した適切なコンディション管理は不可欠となる。
到達予測伸長へ必要LBM把握
こうした現状や課題を踏まえ、順天堂大のアプリ『スラリマッスル』では、①両親の情報を入力することで「到達予測身長」を知ることが可能。また、到達予測身長に達するために必要となるLBM(必須LBM)も把握できるなど、到達予測身長を知ることができることが特徴だ、
また、②LBMや必要エネルギー量をわかりやすく表示することも、成長期の女子アスリートにとって、大きなメリットをもたらすこととなり、身長と体重、体脂肪率を入力することで、日々のLBMと1日に必要なエネルギー量を把握することができる。
トレーニングの成果としてLBMが増えれば、摂取エネルギーも増加させなければならない。LBMが1kg増えたなら、60kcal(おにぎり約三分の一個分相当)のエネルギーをプラスして摂取する必要で、『スラリマッスル』では、LBMの増減に対して補う必要があるエネルギー量を、おにぎりに換算してわかりやすく表示する。
さらに、日々の記録をグラフ表示し、成長の様子を確認することも可能。また、年間の身長成長率・LBM成長率を確認することで、成長スパートのチェックに役立てることができる。
成人競技者の活用も
また、順天堂大では、同アプリは、性差による異なる数値を計算式に反映しており、女子アスリートだけでなく、男子競技者にも活用メリットがある。さらに、アスリート個人に応じた摂取エネルギー量もわかることから、伸長の伸びが止まったアスリート、すなわち成人アスリートであっても、現時点で取るべきエネルギー量を把握することができ、長期的なコンディション管理に役立てるといった活用も期待される。