空港などで麻薬や違法な食品の持ち込みを見つける検疫探知犬、犯罪現場の慰留品から犯人を捜査追跡する警察犬、災害現場で被災者の捜索にあたる災害救助犬、海外では過激派組織イスラム国の指導者バグダディを追い詰めて自爆死させた米国軍用犬と人間には及びもつかない鋭い嗅覚で実力を発揮する犬の話である。
東アジアで猛威を振るう家畜伝染病アフリア豚コレラ(ASF)との戦いの最前線が国際空港手荷物引き渡し場だ。検疫探知犬は、麻薬や違法な食品を嗅ぎ付けるとハンドラーと呼ばれる職員に知らせるべくその場に座り込むように訓練されている。手荷物とし持ち込まれた肉類から豚コレラウイルス(CSF)の遺伝子が発見された実績を受けて、農林水産省は現在全国で36頭いる検疫探知犬を今年度内に53頭に増やすという。また同省は、豚コレラの感染源とされる野生イノシシ対策として防衛省と連携してワクチンを混ぜたエサをヘリコプターから山林へ空中散布。世界でも初めての試みで効果は未知数とのことだが、何もしないリスクを強く感じているようだ。
ところで、最近よく報道される野獣による農作物被害である。熊、鹿、イノシシ、猿に加えて、動物園から逃げ出した台湾サルやリス、キョン、ハクビシン、ヌートリアなど。その上、ペットとして飼っていたアライグマ、フェルモットなど成長に伴ない飼い主に放棄されたものが加わっている。それらの増殖で、近い将来わが国固有種の生態系と自然環境への影響も危惧される。地球上の生物は自然淘汰により多様性を育んできたのだが、人の身勝手かつ無責任な行動から日本猿と台湾サルのハーフが出現する始末、わが国固有種の保全も叫ばれるであろう。
さて、年明け早々に沖縄県内の養豚場で豚コレラの感染が約33年ぶりに確認された。沖縄県固有のブランド力の高いアグー豚約4,800頭が殺処分の対象となった。感染した豚の遺伝子検査では、昨年中に確認されたウィルスと一致したという。感染経路は餌に使った残飯などで、野生イノシシを介した感染ではなかったそうだ。我が家のお正月料理は、おせち料理に加えて豚のスペアリブが定番である。人の口に入ってこそ成仏できるあの美味いアグー豚。殺処分された豚が悼まれてならない。沖縄県では今月中旬に感染被害の終息を目指しているというが、今はただその沈静化を願って止まない。