内閣府は、学生の就職・採用活動開始時期等に関する調査結果をこのほど公表した。企業による学業等への配慮は一定程度されており、改善の傾向もみられる一方で、内々定を指す代わりに他者への就職活動を止めるよう強要する〝オワハラ〟を約1割の学生が経験していることが明らかとなった。また、就職活動過程でセクハラを受けた学生は約2%にのぼった。
調査は今年夏に大学4年生と大学院2年生約7000人を対象に実施。調査によると、企業からのハラスメント行為等の課題も認められる企業から学生の学修活動等への配慮の状況に関して、2018年度調査でもみられたように、いくつかの点で状況の改善が認められている。
「説明会や面接等の日程・時間帯等について配慮があったか」や「個別の面接日時等の設定に当たり配慮があったか」については、「多くの企業で配慮していた」と「ある程度の企業で配慮していた」を合わせた回答割合が上昇傾向にある。
留学を実際に行っていた者に対して、企業による配慮がされていたかについては、今年度調査では「多くの企業で配慮していた」と「ある程度の企業で配慮していた」を合わせた回答割合が2018年度調査と比較して若干低下しているものの、学生自らが配慮を求めた場合に「対応してくれた」との回答割合が上昇しており、企業側の対応に改善が認められる結果もみられる。
一方で、2015年度以降改善の傾向がみられるものの、今年度調査でも内々定を受けた学生の1割以上が企業からいわゆる「オワハラ」(例えば内々定を出す代わりに他社への就職活動をやめるよう強要された、など)を受けたと回答している。
このほか、今年度新たに設定した調査項目では、約2%が就職活動の過程でセクシュアルハラスメント行為を受けたことが「ある」と答えている。内容は「容姿や年齢、身体的特徴について話題にされた」が約3割、「性的な話や質問をされた(性生活について尋ねられた、卑猥な冗談を聞かされた)」が約2割。
就活ルール、7割が「必要」
また、2018年度調査と同様、就職・採用活動の時期が昨年度と同じ時期に設定されたことについては、学生から肯定的な回答が多く、学業専念の時間の確保という観点からも効果がみられる。
今年度の就職・採用活動の時期は、2016年度~2018年度と同様の時期(広報活動開始:卒業・修了年度に入る直前の3月1日以降、採用選考活動開始:卒業・修了年度の6月1日以降)に設定された。
このことについて、今年度に就職活動を行った現在の大学4年生及び大学院2年生の多くは、大学3年生・大学院1年生の秋頃までに認知しており、「先輩の体験など、昨年の就職活動の情報を参考にすることができた」、「夏の暑い時期に就職活動を行わなくて済んだ」「どの時期にどのような就職活動をするか予定をたてやすく準備・行動ができた」などの点で肯定的な認識を示している。
また、今年度新たに設定した調査項目では、いわゆる「就活ルール」について、約7割の学生が「必要」と回答し、特に約5割は「ルールは必要であり、現在の開始時期がよい」と回答している。
業界や企業に関する分析を開始した時期については、卒業・修了前年度の「9月以前」の回答割合が大幅に上昇し、より早期に準備を行う傾向がみられる。こうした傾向はこれまでの調査でも把握されてきた。
就職活動の「始まり」から「終わり」までの期間については、採用選考活動開始が8月1日以降であった2015年度の就職・採用活動との比較でみると、「3ヶ月間程度以内」との回答割合が約4割となるなど期間の短縮化(2015年度は約1割)が確認される。また、採用選考活動開始時期後の6月・7月に学修時間を確保できたとの回答割合が大幅に上昇していることから、就職・採用活動時期が学業の時間確保という観点からも、一定の寄与を果たす結果となっている。