岡山大学大学院医歯薬学総合研究科脳神経内科学の阿部康二教授の研究グループは、岐阜大学研究推進・社会連携機構科学研究基盤センター共同研究講座・抗酸化研究部門の犬房晴彦特任教授らとの共同研究により、認知症の原因として酸化ストレスが重要なファクターであることを、臨床試験により世界で初めて実証した。
同研究チームは、認知症の前段階の認知機能検査などにより、サプリメントの一つの抗酸化配合剤(Twendee X=トウェンディ エックス)が有意な差をもって認知症の進行を防止することを明らかにした研究で、今夏、米国の医学雑誌に掲載されたという。
また、これにより抗酸化配合剤は、認知症予防学会エビデンス創出委員会の6段階ある認定グレードでA判定「認知症を予防する効果がある(★★★)」を受けた。
わが国においても認知症は急速に増加しており、厚労省の新オレンジプランによると、2025年には有病者数は700万人に達すると推定されている。ところが、2011年7月以降、アルツハイマー型認知症に有効な新薬は登場しておらず、今や認知症の新薬開発は全世界共通の喫緊の課題となっている。
今回、岡山大などの研究チームは、認知症の原因として酸化ストレスが重要なファクターであることと、抗酸化配合剤により認知症が予防できることを世界で初めて実証した。
現在の日本の医療では、「今後認知症になる可能性の高い認知症の前段階」であることが判明しても医師が薬剤を投与することはできない。月日の経過によって症状が進行して認知症と診断されてはじめて投薬が可能となる。しかし、「投薬開始」は安心要素ではない。なぜなら既存の認知症薬は副作用が多いうえに、確実に進行を止めるものではないからだ。
一方、岡山大などが見つけ出した抗酸化配合剤は安全性試験も実施されているサプリメントで、副作用もなく認知症に進行する可能性の高い認知症の前段階という段階から誰もが安心して服用することが可能で予防が期待できる。
今回の「抗酸化配合剤の認知症予防の実現」報告は、アミロイドβ(ベータ)やタウタンパク質などの脳のゴミだけでなく、認知症には酸化ストレスの関与が非常に重要であることを世界で初めて臨床試験において実証し、今後の認知症予防薬のさらなる開発につながることが期待される。
岡山大などでは、認知症の前段階の患者TwXは認知症の進行を抑制できることが証明されたとし、今後は認知症と診断された患者に対しての臨床研究を予定している。認知症ではさらに基礎動物実験を継続し、認知症予防効果発現メカニズムの究明を行っていくという。
また、酸化ストレスは認知症のみならず、「酸化ストレス病」とも呼べる糖尿病、がん、潰瘍性大腸炎などの炎症性疾患、動脈硬化、肝炎・肝硬変、アレルギー性疾患、睡眠時無呼吸症候群、骨粗鬆症などの原因であることから、これらの疾患でも臨床研究を広げていく予定だとしている。