科学技術振興機構(JST)は、新たな基幹産業の育成に向けた持続的な研究環境・研究体制・人材育成システムを目指す産学共創プラットフォーム共同研究推進プログラム(OPERA)における令和元年度の新規研究領域・共創コンソーシアムとして計4件を決定した。
「共創プラットフォーム育成型」及び「オープンイノベーション機構連携型」を公募していたもの。採択したのは、6年間にわたる育成型は、東北大学「自律分散協調型直流マイクログリッドの全体最適化を実現する電力・通信融合ネットワーク基盤技術の創出」及び筑波大学「食の未来を拓く革新的先端技術の創出」。5年間にわたって取り組む連携型は、東京工業大学「目的指向型材料科学による全固体電池技術の創出」及び大阪大学「安全な酸化剤による革新的な酸化反応活性化制御技術の創出」。
東北大の新規研究領域
尾辻泰一電気通信研究所教授をリーダーに、金沢工業大、NTT、トヨタ自動車、古河電気工業が参画。Society5.0時代の都市や地域における機能やサービスの効率化・高度化、デジタルトランスフォーメーションやサブスクリプションなどの産業構造変化への迅速かつ柔軟な対応が可能なスマートシティ/コンパクトシティーの都市OSを創出する。
また、経済的な再生可能エネルギーの大量導入実現のため、情報通信、電力、モビリティーの各ネットワークを連携させ、「ICTシステムや電動車両への電力供給」と「ICTを活用した直流マイクログリッド間の電力融通」の観点で最適化したスケーラビリティーとレジリエンスを具備した電力と情報通信のネットワーク融合基盤の研究開発を行う。
筑波大の新規研究領域
つくば機能植物イノベーション研究センター長をリーダーに、国際基督教大、サナテックシード、日本製粉、トーヨーエネルギーファーム、カネカ、サイバーダインが参画。植物を中心とした有用素材開発、農業の省力化技術、機能性植物の開発に向けた基盤的共有技術を共同開発することにより、日本食文化を高度化すると同時に、世界の貧困地域の食糧問題解決に向けた最先端の基盤的技術の提案を目標とする。
『食』にまつわる社会的課題として、地球の人口増加に伴う将来の食料不足や農業就業者の高齢化と労働力不足、高級食材と低価格食材の二極化などがあげられる。SDGs「すべての人に健康と福祉を」に向けた国際的活動もあり、食の問題に対して科学が介入する必然性は存在する。
東京工業大の新規研究領域
リーダーは菅野了次科学技術創成研究院教授。三菱瓦斯、日産自動車、エンパワー・ジャパン、アルバック、リコー、エボニックジャパンが参画。菅野教授らが創り出した超イオン伝導体は、固体中を高速でイオンが選択的に動き回り、低温から高温まで幅広い温度領域で作動する新しい材料で、液漏れもなく安全性や安定性にも優れ、重量当たりのエネルギー密度も高い、全固体電池のキーテクノロジー。共同研究では、超イオン伝導体の開発を世界的にリードしている技術優位性を活用し、全固体電池の実用化を促進するための研究を行う。
大阪大の新規研究領域
リーダーの井上 豪大学院薬学研究科教授のもと、これまでに安定化二酸化塩素と光のみを使い、高難度の化学反応であるメタンの酸化を達成した。酸、光、温度、マイクロ波などによる二酸化塩素の活性化と制御に関する学理を追究して、さらに高難度の化学反応を開拓するとともに、高分子の高機能化やデバイスへの応用、食品添加物や農薬、医薬品などへの幅広い応用の基礎となる基盤化学を推進する。
また、合成化学、高分子化学、分析化学、農学、薬学、医学にまたがる幅広い分野の専門性と広い視野を備えた人材を育成する。