認知症の人が外出中の事故などで責任を問われてしまうケースに備え、富山市は来月から新たに損害保険に加入すると発表した。
徘徊などの際に他人の物を壊してしまったり、誰かに怪我を負わせてしまったりした場合が対象。鉄道事業者に遅延などの損害を与えてしまったケースも含まれ、1件につき最大で1億円が補償される。
本人や家族などの費用負担はない。市が民間の個人賠償責任保険に加入する。示談交渉は本人や家族に代わって保険会社が行う。
対象となる条件は、富山市が独自のネットワークとして形成している「認知症高齢者徘徊SOS緊急ダイヤル」に登録すること。徘徊などに気付いた家族が電話をかけると、そこから連絡を受けた消防署や公共交通機関、タクシー会社、配達事業者、介護事業所なども捜索に協力する取り組みだ。
電話応対は24時間365日の体制。看護師や介護福祉士などの専門スタッフが担っている。登録にあたっては、本人の写真の配信を許可するかどうかなどを選択できる。
この緊急ダイヤルの登録者数は今年7月末現在で497人。協力する企業・団体は549にのぼるという。市は今回の損害保険への加入を登録者数の増加につなげたい考えだ。
2007年に徘徊で事故を起こした男性の家族にJR東海が損害賠償を求めた訴訟以来、本人や家族を地域でどう守るかが議論されてきた。認知症との共生は今後の大きなテーマ。国が全国的な保険の導入を見送った一方で、神戸市や大和市、富山市など独自に対応する自治体の動きが広がっている。