厚生労働省の有識者検討会は31日、緊急避妊薬のオンライン診療に関する要件を大筋で固めた。ネットを通じた診療には、原則として初診時に医師と対面する義務がある。ただ、緊急避妊薬の場合、患者が性犯罪の被害者や、近くにアクセス可能な医療機関がないケースに限っては認める方針。近く、オンライン診療の指針を改定し、例外として加える予定だ。
緊急避妊薬は、性交後72時間以内に服用する必要がある。だが、現状では情報が乏しく、避妊に失敗した患者やデートレイプなどの犯罪被害者らの約半数弱が、偽薬の可能性のある薬をネットで買ったり、服用を断念したりする事態に陥っている。そのため、人工妊娠中絶数が年間で約16.5万人に上っており、手段の1つとして緊急避妊薬の入手のしづらさを解消できないかといった問題提起がされてきた。一方で、SNSなどを利用した海外からの輸入薬の転売や譲渡が散見され、2019年2月には、フリマアプリを使用した転売によって逮捕事例が発生するなど、違法なやりとりが横行している。
今回の要件では、処方できる医師は産婦人科医もしくは研修を受けた医師に限定する。研修を受講した医師の名簿は厚労省のサイトに掲載する見込みで、処方可能な薬局や研修を受けた薬剤師のリストも公表する見込み。実際の処方は、患者に薬剤師の目の前で服用してもらい、必要な情報提供も合わせて行う。避妊が失敗する可能性もあることから、リストに基づいて産婦人科を紹介し、3週間後には対面診療してもらうことを担保する。さらに、文部科学省と連携して性教育の基盤整備にも着手。
・産婦人科以外の医師に対する研修提供
・臨床研修医に対する研修項目の追加
・薬剤師に対する性教育等の研修強化
・学校教育への外部講師等の派遣充実
‐といった項目を予定している。
また、数年間は原則、全件をフォローアップしたうえで、検証を行い、適宜見直しを図っていく考えだ。
オンライン診療については、普及や体制の充実、適切な実施を促すことなどを目的として、昨年3月に指針がまとめられた。改定は今回が初めてになる。緊急避妊薬については当初、幅広くオンラインで処方できる形を議論してきたが、「薬が容易に手に入る状況は、適切な避妊の妨げになる」という医療側の意見を反映するため、対象を狭めることで大筋の合意を得た。