東京経済大学(東京都国分寺市)の大学院(経済学研究科とコミュニケーション学研究科)では、今年10月に実施する博士後期課程シニア向け入試の対象者(入学時に満52歳以上)より、3年分の学費で最長6年まで延長が可能になる制度(長期履修制度)を新設する。6年間かけて、課程博士論文を仕上げることを目指すコース。
一般的に博士後期課程の期間は3年満期で、最長6年まで在学延長が可能だが、4年目からも毎年授業料を納めなければならず、6年間在学すれば6年分の学費がかかる。しかし新制度では、入学時に修業期間として「6年制」を選択すれば、3年分の学費で6年間在学できるようになる。修士課程で修業期間を4年まで選択できる大学院は多いが、博士後期課程は少なく、仕事や介護との両立が前提となっているため、在職証明書や介護認定の証明などの提出が義務付けられている。
定年退職後に時間をかけて研修をしたい人などに対しての長期履修制度は、日本で初めての取り組み。入学時に満52歳以上であれば、書類審査と口述試験のみで受験できる。
コミュニケーション学研究所では2016年から日本初のシニア向けの博士後期課程入試を実施しており、経済学研究科も今年から実施予定で、実務による知見を学術的に研究したいなどの目的を持ってシニア大学院生が入学している。急いで学位を取ることよりも落ち着いて研究したいという希望があることや、研究活動に慣れないために論文執筆の時間がかかることなどを考慮し、新制度の導入を決めた。
大学院の出願期間は、9月2日から9日で、試験日は10月19日。出願に先立ち7月16日より事前相談(要予約)を受け付け、同20日には大学院の説明会を行う。2020年2月にもシニア向け入試を行う。
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21世紀に入って大学院の在学者数は約2倍となり、社会人の大学院への進学意欲が高まっている。文部科学省の学校基本統計調査によると、2017年度の大学院在学者数は約25万人。博士課程の在学者は約7万4000人で、そのうち社会人は約3万人で、42.7%を占めている。修士課程も合わせた大学院全体では社会人の在学者数は約6万人で23.8%。全体に理工系の研究科の在学者が多いが、専門職大学院も増加している。
「社会人の学び直し」についてのニーズは高くなっているが、仕事をしながら大学院へ通うのは時間的に難しいケースが多いため、仕事の忙しさが一段落して定年を迎える前後の世代を対象に、シニア大学院生入試を行う大学も増えてきた。
文科省でも2017年からリカレント教育の拡充に取り組んでおり、人生100年時代に向けた「学び直し」に向けて、さまざまな施策を推進している。
今回の施策は、大学教育としては最高峰である博士課程での研究について、シニア世代に門戸を広くする制度。新制度導入により、海外の大学院へ留学した人や、専門職大学院を修了して修士号を取得した社会人なども、時間をかけて研究を深めることができると注目を集めている。