総務省統計局は、我が国における科学技術に関する研究活動の状況を調査し、科学技術振興に必要な基礎資料を得ることを目的として、科学技術研究調査を毎年行っている。このほど、平成30年調査の結果から、我が国の企業における研究費が上位の産業であり、研究者1人当たり研究費が一番高い「医薬品製造業」の現状を公表した。
それによると、29年度の企業における研究費を産業別にみると、「医薬品製造業」は1兆4653億円で、「輸送用機械器具製造業」の3兆646億円に次ぐ2番目の規模となっている。
上位3産業の研究費について、比較可能な14年度からの推移をみると、「医薬品製造業」は当初、「情報通信機械器具製造業」、「輸送用機械器具製造業」に次ぐ3番目の規模だった。だが、29年度には、「情報通信機械器具製造業」を上回って2番目となっている。
上位3産業の研究費を14年度と比較すると、「医薬品製造業」は51.7%増、「輸送用機械器具製造業」は76.3%増となっているのに対し、「情報通信機械器具製造業」は40.1%減となっていた。
「医薬品製造業」の研究費の増加には、国内外の医薬品市場が拡大していることが背景にあげられる。
企業での研究者1人当たりの研究費を産業別にみると、「医薬品製造業」が6563万円と最も高額で、全産業(2767万円)と比較して2.4倍となっている。
「医薬品製造業」は、研究費が2番目に高い産業となっている一方で、研究者数が9番目(2万2326人)とそれほど多くないことから、研究者1人当たり研究費は最も高くなっている。
企業での女性研究者の割合を産業別にみると、「医薬品製造業」は28.3%で、「食料品製造業」の34.3%に次ぐ2番目。全産業(9.6%)と比較した場合は2.9倍となっている。
また、「医薬品製造業」の女性研究者数(実数)について、この10年間の推移をみると、概ね増加傾向で推移しており、30年度は6519人で21年から1417人の増加となった。
これらについては、大学の薬学系学科で女性の学生数が増えてきていることが背景として考えられる。
29年度の技術貿易収支は、我が国全体で3兆2546億円の輸出超過となった。このうち、国際的な技術競争力を表す指標と考えられる〝親子会社間での取引を除いた技術貿易収支〟をみると、「医薬品製造業」は1853億円の輸出超過で、「輸送用機械器具製造業」の2395億円に次ぐ収支額となった。また、技術輸出に関しては、3269億円と、全産業で1番となり、このことから、「医薬品製造業」は、国際的な技術競争力が高い産業と考えられる。なお、親子会社間における取引について調査を始めた平成13年度と比較すると、親子会社間取引を除いた技術貿易収支は13億円の輸入超過から、1853億円の輸出超過と大きく転換している。これは、大手企業が海外展開に力を入れ、日本発の新薬が世界的に受け入れられてきていることなどが背景として考えられている。
企業の研究費に占める「医薬品製造業」の割合について、主要国(G7、中国と韓国)間でみると、我が国は、アメリカの16.5%に次いで高い10.6%。6.5%のドイツや4.2%のイタリア、4.0%の中国などと比較しても高い水準を示している。