オンライン診療の在り方を議論する厚生労働省の検討会は3月29日、オンライン診療による緊急避妊薬の処方を認める方針を固めた。十分な知識を持った医師から説明を受けた本人が診察から3週間後に産婦人科を受診することや、1回の診察で1回分の処方を厳守すること、薬を薬局の薬剤師の前で服用すること、利用者が犯罪被害を受けた可能性がある場合は警察や児童相談所に相談・通報してカウンセリングを行うことなどが条件。オンライン診療では原則、初診を対面診療としているが例外扱いとする。
緊急避妊薬をめぐっては、避妊手段の1つであるが、処方薬であることや入手しづらいことなどが課題とされてきた。具体的には、性交後72時間以内に内服する必要性があり、迅速な対応が求められるにも拘らず、地方では産婦人科を受診しにくいことや、犯罪などが関係するケースなどでもアクセスしにくいことがあげられている。
その一方、容易に薬が入手できるようになることで適切な避妊法が取られないようになることや薬を使っても妊娠が防げないケースがある点など使用者が必要な知識を持っていないこと、犯罪被害・転売に対応するのが困難ではないかといった問題点もあげられていた。実際、SNSなどを利用した海外からの輸入薬の転売や譲渡も散見され、2019年2月には、フリマアプリを使用した転売によって逮捕事例が発生するなど、違法なやりとりが横行している。
また、日本産科婦人科学会がまとめた「緊急避妊法の適正使用に関する指針」では、緊急避妊薬を処方すべきかの判断について、過去の月経などの情報を的確に聴取し判断する必要があるとされている。
今回対象となるオンライン診療では、医師が得られる患者情報が限定的であるため、原則として初診は対面診療としてきた。ただし、限られた情報でも診断や治療方針の決定が可能で、かつリスクが低い場合においては例外として初診からのオンライン診療を認めている。
この日の会合では、日本産科婦人科学会と日本産婦人科医会が意見を提出した。両団体は、緊急避妊薬をオンライン処方の対象薬品に加えることに対し、強い懸念を表明。処方に必要な医師の専門知識や、服用のチェックといった安全確保に必要な体制を担保するよう訴えた。対面診療については、処方時に約束を取り付けても、3週間後に診察を受けない人がいるのではないかとしている。