新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)とタイ工業省、工業団地公社は、使用済み自動車(ELV)リサイクルの実証事業を実施することに合意し、基本協定書をこのほど締結した。
実証事業では、首都バンコクなどタイ国内において、環境に配慮した使用済み自動車解体プロセスの導入や、関連する制度設計への協力を実施する。また、タイ国内で処理できない有用資源を日本で再資源化することで国際資源循環を実現し、タイをはじめとするアジア諸国におけるリサイクルモデルの確立を目指す。
タイでは、自動車販売台数の増加に伴い、今後はELVの増加が見込まれるが、現状では、ELVに特化した処理や許可に関する法制度が整備されておらず、フロンや廃液などが適切に処理されないまま環境中に放出されている可能性がある。
また、手作業を中心とした労働集約的なELV解体作業が場当たり的に行われているため、ELVからの資源回収が十分に行われていないほか、今後増加が見込まれるELVに対して処理能力不足に陥ることが予測される。
実証事業は、2016年度から実施している「アジア省エネルギー型資源循環制度導入実証事業」のテーマの1つとして実施するもので、2017年度に実施した実現可能性調査の結果をもとに、外部専門家による審査を経て、2018年度から3年間の予定で実施する。
フロンや廃油・廃液の回収が解体作業の中に組み込まれ、トレーサビリティ(回収物の処理履歴追跡)機能を持つ環境配慮解体プロセスを導入するほか、自動車解体重機の導入により解体作業効率を大幅に向上させる。
環境負荷を抑えつつ、ELVから効率的に有用金属などを回収するシステムを実証することで、タイの廃棄物処理の適正化に貢献することを目指す。さらに、タイ国内で処理できない基板や触媒などの有用資源を日本で再資源化することで国際資源循環を実現し、タイをはじめとするアジア諸国におけるリサイクルモデルの確立を目指す。
また、これと並行して、日本の自動車リサイクル法を参考にしながら、タイに適した適正処理に関わる制度設計の検討への協力も経済産業省とも連携しつつ推進する予定。