2017年に発表されたAI関連の研究出版数で、日本は、中国、米国、インド、英国、ドイツに次ぐ第6位―。学術ジャーナル出版と情報分析を専門とするエルゼビアが、グローバルAIレポートの補足データ兼比較分析として、日本のAI研究実績に関する最新の調査結果を公表した。
この調査から、AI研究は世界的に加速しており、2008~2012年の5年間では5%以下であった成長率が、過去5年間(2013~2017年)で年間約13%増加していることが判明した。
これに対し、世界中のあらゆる分野における過去5年間(2013~2017年)の全体的な研究増加率は年間0.8%にとどまっている。
エルゼビアの調査結果分析によると、多くの国々と同様、日本でも人工知能(AI)は重要課題として認識されており、近年は第5期科学技術基本計画におけるSociety5.0および統合イノベーション戦略の下で取り組みが強化されている。AIにおける日本の研究出版数は世界第6位であり、世界平均と同程度の13%で増加している。
研究成果物の10%は産業界による、または産業界との共同研究によるものだが、その数は中国の3%より高く、米国の13%より低くなっている。
危機感を持つ必要性が浮き彫りに
また、近年の日本のAI研究は被引用および被ダウンロードのインパクトにおいて存在感を増しているものの、被引用数は2017年の世界のAI平均の80%、ダウンロード数は世界のAI平均レベルに留まり、米国や中国と比較すると、これらの数字は低くなっている。被引用数に関しては、米国は世界平均より50%高く、中国は1998年に世界平均を50%下回っていたのにも関わらず、2017年には世界平均に近いレベルに到達し、著しい伸びを見せた。
調査結果から、日本はグローバルのAI研究では主導的な役割を果たしているものの、世界第3位の経済大国として、現在の取り組みでは不十分であるという危機感を持つ必要性があることが浮き彫りとなった。
エルゼビアの今回のAI調査のプロジェクトリーダーは、「日本は産業基盤が確立された世界第3位の経済大国であり、研究に対し大きな投資を行っていることからも基礎的な研究のみならず、産業及び社会への応用といった観点でもAI研究にとって重要な役割を果たしていると言える。日本国内でのAI研究は年間で13%増加と目覚ましい成長を見せたが、1998年から2002年の期間で8%であったAI研究の国際的シェア比率は2013年から2017年の間で4%にまで落ち込んでいる。この事実はいかにAI研究の競争率が国際的に高まっているかを示しており、日本が今後国内研究のみにとどまらず国際共同研究を推進していくことが重要な課題でもあることも示唆している」と指摘している。
「ファジィシステム」などに注目
今回の調査において、AIの分野では、「検索と最適化」「ファジィシステム」「自然言語処理と知識表現」「コンピュータビジョン」「機械学習と確率的推論」「計画と意思決定」「ニューラルネットワーク」の7種類の研究分野が注目されていることが明らかになった。これらの分野のうち、機械と確率的推論、ニューラルネットワーク、コンピュータビジョンの研究発表数と成長率が最も大きいことが分かったという。