わが国のインフラが今後急速に老朽化することが予想される中、国や地方公共団体が管理するあらゆるインフラを対象に、国及び地方公共団体が一丸となってインフラの戦略的な維持管理を推進するため、平成25年11月29日に開催された「インフラ老朽化対策の推進に関する関係省庁連絡会議」において、「インフラ長寿命化基本計画」が策定された。
文科省、早期策定を要請
文部科学省では基本計画を踏まえ、所管施設の長寿命化に向けた各設置者における取組を推進するため、文科省インフラ長寿命化計画(行動計画)を策定するとともに、都道府県など各設置者に向けて行動計画・個別施設計画をそれぞれの目標年度までに策定するよう要請してきた。
行動計画の策定は完了したが、昨年4月1日現在、公立学校施設の長寿命化計画(個別施設計画)策定率は、計画策定率に比べて極めて低い状況となっている。このため文科省では、個別施設計画が未策定の設置者に対し、2020年度までのできるだけ早い時期に策定するよう求めている。
政府の調査によると、公立学校施設に係る長寿命化計画(個別施設計画)を策定済みの設置者は、都道府県18、政令指定都市9、市区町村95の122のみ。個別施設計画策定率は、全1786のうち、前年度比3%増の7%にとどまっている。今後の見込みでも2019年4月時点で22%、2020年4月時点で45%となっている。
個別施設計画策定率が高いのは、1位:秋田県19.2%(前年度3.6%)、2位:長崎県18.2%(同12.5%)、3位:福井県16.7%(同11.1%)、4位:大分県15.8%(同10.5%)、5位:愛知県14.5%(同9.1%)、6位:広島県12.5%(同0.0%)、7位:神奈川県11.8%(同2.9%)、8位:福岡県11.5%(同3.1%)、9位:群馬県11.1%(同5.4%)、9位:東京都11.1%(同12.7%)の上位10都県。
一方、個別施設計画策定率が低い下位10道県は、富山県0.0%(前年度0.0%)、鳥取県0.0%(同0.0%)、香川県0.0%(同4.5%)、愛媛県0.0%(同0.0%)、熊本県0.0%(同0.0%)、宮崎県0.0%(同0.0%)、沖縄県0.0%(同0.0%)、北海道2.2%(同2.88%)、鹿児島県2.3%(同0.0%)、高知県2.9%(同0.0%)だった。
未着手下位は富山など10道県
個別施設計画の策定着手時期が未定の設置者数は、全体の13%に当たる238設置者にのぼった。また、個別施設計画の策定着手時期が未定の設置者の割合が高い都道府県は、1位:奈良県32.5%、2位:福島県27.6%、3位:岩手県26.5%、4位:熊本県26.1%、群馬県25.0%、6位:23.8%、7位:三重県23.3%、8位:香川県22.2%、9位:北海道20.0%、10位:静岡県19.4%の10道県だった。
個別施設計画の策定状況を施設ごとに見ると、直営郵便局やUR賃貸住宅は100%達成している。公営住宅では9割近く達し、漁港施設、農業用排水機場でも8割前後に到達している。また、警察庁舎、一般廃棄物処理施設、警察宿舎で4割前後となっている。
これに対し、社会体育施設、文化会館、社会教育施設、病院などは10%程度で、7%の公立学校施設は最も低い。
特に、策定完了の目標としている2020年度まで残り2年となり、計画の策定には相応の時間を要することから、未だ個別施設計画の検討に着手していない設置者は早急に検討に着手する必要がある。