運動器の障害が原因で、立ったり歩いたりする機能が低下する「ロコモティブシンドローム」の予防策や改善策を検討・実現していくためのプロジェクトである「LOCOMONOVATION(ロコモノベーション)」が12日に発足した。「人類が歩き続ける・移動し続けるアイデア」を追求し、課題解決を図っていくのが狙い。来年には賛同・連携する企業や自治体などと共同で研究開発に取りかかる予定だ。
プロジェクトは、日本整形外科学会と博報堂が運営する「ロコモ チャレンジ!推進協議会」が主導。医療、テクノロジー、コミュニケーションの3つの視点からアイデアを検証し、「移動の自由を誰もが失わない世界の実現」に活かす道筋を探っていく。来年2月には医療関係者以外も含めた幅広い層から、二足歩行のイノベーションに向けた意見や要望、困りごとなどを収集。参画するメンバーで検討を重ね、8月には協同事業者と開発をスタートさせる。その後、年末の中間発表を経て、再来年4月に第1弾となる企画を発表する見通しだ。
この日の会見では、プロジェクトメンバーに名を連ねる「ロコモ チャレンジ!推進協議会」の大江隆史委員長や筑波大学の落合陽一准教授、TBWA/HAKUHODOの近山知史シニアクリエイティブディレクターが登壇。大江委員長は、現在のロコモ対策である運動と投薬、手術に加え、足りない一手を考えていくことが重要だと指摘した。
さらに、落合准教授は「ロコモに関する課題の認知度を上げつつ、技術開発と社会実装を同時に行う必要がある。そのため、『高齢者と障害者』や『メディアアートと聴覚ダイバーシティ』などのカウンターパートを結び付けることで課題を解決していく方法が有効だ」と述べた。
また、近山氏は、イノベーションでは、利用者や受け入れ側のマインドセットが必要だと主張。実際、自身が関わる足漕ぎ式の車いす「COGY」では、車いすに乗る目的を「仕方がないため」から「自分の足で進むため」に、「注文をまちがえる料理店」では店員と客が「間違いを楽しむ」という考え方に転換していると説明した。そのうえで、「二足歩行の問題の対象を『高齢者』から『みんな』に広げること」と「二足歩行の意味やよろこびを拡張すること」が必要だと訴えた。
取り組みは、東京オリンピック・パラリンピックや、先日決まった大阪万博といった節目で進捗などを打ち出していく方針。いわゆる「団塊の世代」が75歳以上を迎える2025年には、二足歩行に関する革新的なイノベーションを世界へ発信していくという。