文部科学省の独立行政法人日本学生支援機構が取りまとめた「学生支援取組状況調査」(平成29年度)で、大学や短大、高専が学生支援として特に重視しているのは「修学・学習支援」であることが明らかになった。次に大学・短大では「就職支援」、高専では「学生相談」が高い割合を占めている。
学生支援の効果を測定するための評価の実施については、各学校種ともに7割以上が「学生アンケート」などを中心に「実施している」と回答。特に国立大学では87.2%と最も高くなっている。
業務の質的多様化で負担増
学生支援のための組織設計や運用などの課題として、各学校種ともに「業務の量的増加や質的多様化による負担増」の割合が最も高くなっており、ほかに「スタッフの量的な不足」や「学生が抱える支援ニーズの組織的把握」「スタッフの能力開発」も高い。
2年前の前回調査と比べると、大学では「業務の量的増加や質的多様化による負担増」が7.7ポイント増加、短大は「学生への情報提供不足」が6.9ポイント増加、高専では「適切な能力を持ったスタッフの配置」が17.7ポイントと大幅に増加している。
キャリア教育に関する課題については、大学では「学生の自己理解・自己管理能力の育成」(51.0%)、「低学年次からの指導の拡大」(48.2%)の順に高くなっている。短大では「学生の基礎学力の低さ」と「学生の自己理解・自己管理能力の育成」がともに56.3%で最も高い。高専では「学生のキャリアプランニング能力の育成」(56.1%)、「学生の人間関係形成・社会形成能力の育成」(50.9%)の順に割合が高くなっている。大学全体を設置者別でみると、私立大学で「学生の基礎学力の低さ」(47.4%)が他の設置者に比べて高い。
学生相談に関する今後の課題として特に必要性が高いと思われる事項を聞いたところ、各学校種ともに上位3項目が同じ順序だった。割合の高い順に、「悩みを抱えていながら相談に来ない学生への対応」、「精神的危機の状況にある学生への対応」、「障害のある学生への対応」となっている。
「相談員と教職員との連携・協働」「学生相談の体制・環境整備」についても割合が高くなっており、各学校種で5割を超えた。前回調査と比べると「障害のある学生への対応」の割合が増加し、大学全体で5.8ポイント、短大全体で6.7ポイント、高専全体で11.9ポイント増加している。
修学に関する相談の最近2年程度の傾向について、「増えている」と回答した割合が最も高いのは、大学や短大では「履修登録・科目選択」(大学37.5%、短大30.4%)、高専では「数学、物理など理系基礎に関すること」(42.1%)となっている。大学で「増えている」相談項目は履修・科目選択とともに「教員との相性や人間関係」「授業における友人関係」も多く、前回調査と同様の傾向が続いている。
成績不振・不登校対策も
成績不振学生に対する取組としては、「全学で統一的に実施している」と回答した割合が、「学部あるいは学科単位で独自に実施している」よりも、全体的に高い傾向になっている。具体的な取組について「全学」でみたところ、大学と短大では「担任もしくはゼミ・研究室の教員により面談している」(大学46.5%、短大54.4%)、高専では「保護者と連絡をとっている」(56.1%)の割合が最も高くなっている。
出席状況の悪い学生や不登校の学生に対する取組としては、成績不振学生に対する取組と同様に、「全学」の割合が、「学部・学科単位」よりも全体的に高い傾向になっている。具体的な取組について「全学」でみたところ、大学・短大では「担任もしくはゼミ・研究室の教員により面談している」(大学41.5%、短大52.2%)、高専では「保護者と連絡をとっている」(52.6%)の割合が最も高くなっている。
成績不振学生・不登校学生に対する支援の課題については、各学校種ともに「退学率を減少させる方策」の割合が最も高い。他に、「学生のモチベーション維持・向上」「学生の基礎学力」「問題学生や要支援学生の把握」「個々の学生へのサポート・ニーズの把握」も高い。高専では、他学校種と比べて、「障害のある学生に対する支援」(71.9%)、「学生の基礎学力」(75.4%)、「予算や人員等、支援のための資源について」(66.7%)の割合が高い。