日本政策金融公庫農林水産事業は、今年7月に実施した食品関係企業の電子商取引(EC:エレクトロニック・コマース)の取組状況についての調査の結果を公表した。それによると、食品関係企業の62.8%がECに取り組み、そのうち55.7%が「今後、取引を拡大していく」意向であることが分かった。
この調査は、製造業、卸売業、小売業、飲食業といった全国の食品関係企業7101社を対象に行われた。有効回収数は全体で2498社となり、回収率は35.2%となった。内訳は、製造業が1640社、卸売業が617社、小売業が194社、飲食業が47社。
食品企業の約6割がECに取り組む 販売額に占める割合20%以下が半数
今回の調査では、食品関係企業を対象にECの取組状況が調べられたが、その結果、62.8%の食品企業がECに取り組んでいることが分かった。また、食品関係企業の販売額に占めるECの割合については、「1%~20%」と回答した割合が51.9%、「20%超」との回答割合が10.9%となった。
販売額に占めるECの割合を業種別(製造業、卸売業、小売業)にみると、卸売業は他業種に比べて「20%超」の割合が高い一方、「ECに取り組んでいない」割合も高く、ECを活用している企業とそうでない企業が二極化している状況がうかがえる結果となった。
ECに取り組む食品企業の約半数が取り扱いを拡大する意向
次に、ECに取り組む食品企業に対して、今後のECの取扱いに関する意向を聞いた結果、55.7%の企業が「今後、取引を拡大していく」と回答しており、半数以上がECを拡大する意向であることが分かった。
さらに、「今後、EC取引を拡大していく」と回答した企業に対して、販売額に占めるECの割合の目標を聞いた結果、「20%超」と答えた企業は37.7%となり、現状の18.4%の約2倍となった。
拡大にあたっての物流面の課題は「共同輸送等、他企業との連携強化」
さらに、ECの取り組みを「今後、取引を拡大していく」と回答した企業に対し、EC拡大にあたっての物流面での課題が聞かれたが、その結果、「現状のままで対応可能」との回答は34.3%に留まり、約65%の企業で物流面に課題があることが分かった。その内容については、「共同輸送等、他企業との連携強化」との回答割合が24.0%で最多となった。次いで「新技術の導入(物流作業の自動化など)」が22.4%、「労働力確保」が20.5%で続いている。
特に、卸売業では38.5%と多くの企業が「共同輸送等、他企業との連携強化」を課題にあげている。さらに、卸売業を売上規模別にみると、売上高が50億円以上の企業では「現状のままで対応可能」との回答割合が18.9%に留まるなど、大規模な卸売企業の方がECを拡大させる上で物流面に課題があることがうかがえる。
また、小売業では、物流作業の自動化や情報システムの高度化などの「新技術の導入」を課題としてあげる割合が28.4%と最も多く、次いで「労働力確保」が27.0%で多かった。