日本政策金融公庫農林水産事業は、2018年7月に実施した食品関係企業の農業参入に係る取組状況についての調査結果を公表した。それによると、食品企業で既に農業に参入している企業は、2010年の前回調査に比べて増加していることが分かった。農業参入の目的については、「原材料の安定的な確保」との回答が最も多かった。また、農業に参入した食品企業において、5年以内に農業部門を黒字化した企業は37.9%と4割を下回ることが分かった。
食品企業の農業参入が進む、目的は「原材料の安定調達」
調査では、食品企業に対して、農業参入への取組状況が聞かれたが、「既に参入している」と回答した企業は12.7%となり、前回調査結果と比べて3.3ポイント増加していることが分かった。
しかし、「検討または計画している」、「関心はあるが検討していない」の農業参入に関心を示す回答が減少していることから、食品企業の農業参入が進んだ一方で、新たに農業参入に関心を持つ層は増えていないことがうかがえる結果となった。
農業参入の目的については、「原材料の安定的な確保」の回答が最も多くなり、次いで「本業商品の付加価値化・差別化」、「地域貢献」の順となった。
農業参入から5年以内に黒字化する企業は4割以下
次に、「既に参入している」と回答した食品企業に対して、農業部門が黒字化するまでに要した期間が聞かれたが、その結果、5年以内に黒字化した企業は37.9%と4割を下回ることが分かった。
アンケートでは「作付から収穫まで年1回転であり作業の習熟に時間を要した」、「本業の安定的な稼働が目的であり、農業部門のみでの採算は意識していない」などの声も寄せられている。
参入における最重要課題は「人材の確保」
また、「既に参入している」、または「参入を検討または計画している」と回答した企業に対して、農業参入にあたっての課題が聞かれたが、「人材の確保」との回答割合が63.2%となり、前回調査と比べて27.0ポイントと急激に伸びており、大きな課題となっていることが分かった。2番目以降は「採算性の判断」、「農地・事業地の確保」、「技術習得」と続いており、農業参入にあたっては農業の特性を理解している専門家によるサポートが求められていることがうかがえる。
この質問については、「資金調達」が前回調査から15.0%減少して22.8%となったことも特徴的な動きと言える。
参入方法は「自社・子会社の直接参入」が最多
さらに、「既に参入している」、「参入を検討または計画している」と回答した企業に対し、農業参入の方法が聞かれたが、「自社・子会社が直接参入」との回答が最も多く全体の63.9%となったが、前回調査と比べると10.1%増加している。一方、「農業法人への出資・業務提携」による農業参入は17.2ポイントとなっており、前回調査と比べて5.2ポイント低下している。このことから、業務提携などの間接的な関与による農業参入は減少し、食品企業が自ら関与し農業経営を行う方法が増加していることが分かった。