国立がん研究センターなどの研究チームはこのたび、1滴の血液から卵巣がんを99%の確率で発見できる検査法を発見したと公表した。初期症状の少ない卵巣がんの早期発見と生存率向上が期待されるという。研究成果は17日付の英科学誌に掲載。今後は5年以内の実用化に向けて、さらに研究を重ねていく方針だ。
研究チームは、がんなどの疾患で血液中の種類や量が変化する「マイクロRNA」という物質に着目。卵巣がん患者428人分、その他のがん患者859人分、がんでない2759人分、合わせて4046人分について、血液に含まれる卵巣がん特有の「マイクロRNA」を判別する調査を行った。その結果、進行度で初期にあたるステージIで95.1%、ステージⅡからⅣでは100%の制度で判別が可能だった。
卵巣がんは毎年1万人が罹患し、そのうち半数にあたる約5000人が死亡する予後の悪いがん種。卵巣が骨盤内にあるため、初期の自覚症状が乏しく、早期治療が極めて困難で、発見時にはすでに転移を伴う進行症例が6割を超えていることが特徴だ。これまでは早期発見が強く望まれる一方で、科学的に有効なスクリーニングがなく、その方法の確立が長年の課題とされてきた。
■ 今回のスクリーニングと超音波検査が早期発見の糸口に
研究結果を受けて、研究を主導した国立がんセンターの加藤友康婦人腫瘍科長は、「卵巣がんは15歳以上のすべての年齢で増加傾向にあります。卵巣がんの初期は症状に乏しく、およそ半数が進行した状態で発見されます。既存の腫瘍マーカーにこの新しい血液検査を組み合わせて一次スクリーニング、そして二次スクリーニングには超音波検査というプログラムが、卵巣がんの早期発見と治療成績向上に寄与することが期待されます」と述べている。