日本の特許庁の主催で、日米欧中韓の五大特許庁長官会合がこのほど開催された。今回の会合では、これまでの特許審査のワークシェア、ITシステム、品質管理、分類などに関する協力の着実な進展を確認するとともに、IoTやAIなどの新技術への対応について各庁間での情報共有や意見交換を行うことで合意し、5庁で共同声明を出した。
共同声明では、1)ユーザーとの関係強化、2)高品質で信頼性の高い審査結果の提供、3)発展する新技術への知財庁としての対応―の3項目を中心に取り組む姿勢を確認した。特に、新技術への対応は、未来視点の五庁協力という新たな一歩を切り開くものと期待されている。
特許出願の受理件数が世界3位の日本では、受理した出願に対し、迅速性と高品質を両立したレベルの高い特許審査により「強く・広く・役に立つ特許権」を迅速に付与できるよう取り組んでいる。こうした日本の「世界をリードする審査」を核に、国際的に発信し海外知財庁での利用促進を図るとともに、海外でも日本とほぼ同じ範囲で権利が保護されることが重要。
日本企業の新興国・途上国での知財活動も活発になっている。例えば、将来の有望市場であるインドへの特許出願件数も着実に増加し、特許以外にも、商標に関しては、今や新興国・途上国への出願件数は、先進国への出願件数よりも多くなっている。
特許庁は、日本企業のグローバルな事業展開を支援するために、今後、「世界最速・最高品質の特許審査の実現」「日本の特許審査結果の国際発信と利用促進」「世界の知的財産保護環境の向上の主導」「審査能力の向上の支援」「知財制度整備支援」「海外の知財情報の提供のワンストップ化」「日本企業の海外展開を支援する体制の充実」などの取組を進める。
具体的には2023年度を目途に「権利化までの期間」と「一次審査通知までの期間」をそれぞれ平均14か月以内、平均10ヶ月以内にするとともに、特許審査の質の維持・向上を図る。
また、商標五庁会合(TM5)などの枠組みを通じて、日本ブランド(地名や著名商標など)の適切な保護を確保するため、悪意の商標出願に対する各国の考え方の共通理解の形成を主導する。
インドやアセアン、ミャンマーへの支援も
インドやアセアン5カ国(ベトナム、マレーシア、タイ、フィリピン、インドネシア)への重点的な特許審査官育成、アセアン諸国に対する特許の審査マニュアル改訂・策定の支援を通じて、優れた日本の特許審査手法の普及を図る。さらに、中国・韓国・台湾・アセアン諸国やミャンマーなどに対して、類似群コードなどの日本の商品・役務の商標審査手法の浸透を図り、各国における商標審査結果のバラツキを少なくする。
海外侵害対策補助金の拡充や海外知財訴訟保険補助金の新設により、冒認出願対策や係争に対する資金的支援を強化や海外での日系企業の相談窓口体制を強化するため、海外駐在員による現地支援ネットワークの拡大・充実を図る。