総務省は、地方創生を実現する観光地域づくりを推進する観点から、日本版DMO(地域の多様な関係者を巻き込みつつ、科学的アプローチを取り入れた観光地域づくりを行うかじ取り役となる法人)等における設立段階の認識や取組状況等を調査し、7日にその結果を取りまとめた。それによると、目指すべき地域の将来像(ビジョン・理念等)を「設定した」ものは約91%で、将来像の設定だけでなく、必須KPI(日本版DMO登録に当たって設定しなければならないKPI(旅行消費額、述べ宿泊者数、来訪者満足度、リピーター率の4項目))との関係を体型的に整理することで、組織として達成すべき目標・成果を具体化しているものがみられた。
全国の複数または単独都道府県を事業区域とする日本版DMO等に対して「地方公共団体からの観光地域づくりに関する権限や責任の付与が不十分であったことによる支障の有無」を調査した結果、権限や責任の付与が不十分であったことにより事業実施に支障をきたしたことが「ある」と回答したものが約18%あった。その一方で、日本版DMOに対して負担金を支出する市町村との間でブランドコンセプトを共有することで、コンセプトに沿った裁量ある運営が可能となり、地域団体や民間事業者と連携した滞在コンテンツの開発・販売等を展開しているものがあった。
全国の複数または単独の市区町村を事業区域とする日本版DMO(都道府県行きを事業区域とするものは除く)に対して「地域住民の理解を得る取組」の実施状況等を調査したところ、地域住民の理解を得る取組を「行っている」ものは約42%で、調査した日本版DMO等からは、「地域住民の理解を得るために、まずは地域住民に対して日本版DMO等の認知度をいかに向上させるかが課題」と言った意見が見られたほか、地域住民が自らの取組により観光客が訪れることを体感できる事業を実施しているものがみられた。
全国の日本版DMO等に対して、「事業区域が重なる日本版DMO等間での連携・役割分担の現状」等を調査した結果、日本版DMO等間での役割分担が「必要である」と回答したものが約79%であった。
その一方で、日本版DMO等間での役割分担の現状については、「明確でない」としたものが約25%、「一部明確であるが、明確でない部分もある」としたものが約27%であった。
また、一部日本版DMOで、圏内の各市町村の目指すべき姿の実現をサポートすることを自らの役割と位置づけ、市町村ごとの観光関連データ「市町村版カルテ」の提供等に向けて市町村等の関係者と議論を重ねているものが見られた。
観光による地方創生を実現していくためには、観光に関する各種データの継続的な収集・分析、明確なコンセプトに基づいた戦略の策定、KPIの設定等を通じた観光地域のマネジメント、マーケティングが重要となっている。
一方、観光に係る政府統計は、全国単位、都道府県単位のデータがほとんどで、総務省がヒアリングを行った日本版DMO等の一部からは、「対象エリアに対応した公的統計がなく、把握に苦慮している」との意見がみられた。