国土交通省の中央建設業審議会・社会資本整備審議会産業分科会建設部会基本問題小委員会(委員長:大森文彦弁護士・東洋大学法学部教授)はこのほど、昨年7月の建設産業政策会議で提言された「建設産業計画2017+10」で示された施策を具体化するとともに、昨今の建設業をめぐる課題に的確に対応するために講ずべき措置を示した「中間とりまとめ」を策定した。中間とりまとめでは、長時間労働の是正、処遇改善、生産性向上、地域建設業の持続性確保の4つの分野で、建設業法等の改正も視野に早期に講じるべき施策を示している。
長時間労働の是正では、受発注者双方による適正な工期設定の推進のため、適正な工期設定に関する考え方(基準)の明確化、受注者による工期ダンピングの禁止、不当に短い工期による請負契約の禁止と違反した場合の注文者への勧告制度を求めた。
また、施工時期等の平準化の推進のため、施工時期等の平準化を公共工事の入札や契約で公共発注者が取り組むべき事項として明確化することや、平準化の取組が遅れている地方公共団体に対して、関係省庁と連携して、より実効性をもって取組を促すことができる制度の創設が必要と提言している。
処遇改善では、技能・経験にふさわしい処遇(給与)の実現のため、一定の工事において、注文者が請負人に対して一定の技能レベルを指定できる制度の創設、施工体制台帳に記載すべき事項に、作業員名簿(当該建設工事に従事する者の氏名)の追加、建設工事を適正に実施するための知識や技能等の向上を求めた。
また、社会保険対策の一層の強化のため、社会保険に未加入の建設企業は建設業の許可・行進を認めない仕組みの構築、下請代金のうちの労務費相当分の現金払の徹底について検討が必要とした。
生産性向上では、限られた人材の効率的な活用の促進のため、主任技術者配置要件合理化のための専門工事共同施工制度(仮称)の創設、元請建設企業の技術者配置要件の合理化を求めた。
また、仕事の効率化や手戻りの防止のため、受発注者双方が施行上のリスクに関する事前の情報共有を実施することが必要とした。
さらに、建設工事への工業製品の一層の活用に向けた環境整備として、プレキャストなどの工事製品に起因して建設生産物に不具合が生じた場合に、工場製品の製造者に対し原因究明、再発防止等を求めるための勧告等ができる仕組みを構築することについて検討することとしている。
重層下請構造の改善に向けた環境整備のため、専門工事共同施工制度(仮称)のほか、技能者の社員化、施工体制台帳や施工体系図による下請次数の見える化等、発生要因に応じた様々な施策を総合的に実施することを求めている。
地域建設業の持続性確保では、災害時やインフラ老朽化等に的確に対応できる入札制度の構築、建設業許可制度の見直しによる建設業の持続性確保が必要とした。
中間とりまとめではこのほか、今後さらに検討すべき事項として、民間発注工事における円滑な工事発注や適正な施工の推進、民法改正への対応、建設産業の経営力の向上をあげている。