2018年6月22日 農研機構、新たに2つのリンゴ新品種を育成 高温への対応、温暖な産地などでの普及に期待

農研機構は、リンゴ新品種として、高温でも濃赤色に着色しやすく食味も良い「錦秋」と、同様に高温でも着色しやすく軟化もしにくい早生の「紅みのり」を育成した。

「錦秋」は、温暖なリンゴ産地でも果皮が濃赤色に着色しやすく、甘味が多く歯ざわりの良い中生の品種。地球温暖化に伴い、中生品種であっても、気温が高い状態のまま収穫時期を迎えることが増え、着色不良が発生しやすくなっているが、「錦秋」は、こうした条件下でも着色しやすいだけでなく、甘味と酸味のバランスが良く、肉質が緻密で食味良好である。

また、早生リンゴの主力品種である「つがる」では、地球温暖化に伴って高温による着色不良や果肉軟化が問題となっているが、早生の新品種「紅みのり」は、温暖なリンゴ産地でも着色しやすいだけでなく、良好な食味になるまで樹上に置いても果肉が軟化しにくく、収穫後の日持ちも良好である。

 

 温暖なリンゴ産地でも着色しやすく高品質な中生品種

近年の地球温暖化に伴い、温暖なリンゴ産地では、中生品種であっても、気温がかなり高い状態のまま収穫時期を迎えることが増えている。そのため、赤色品種では、着色不良が発生しやすくなっており、対策を講じることが求められている。

また、リンゴの中生品種としては、「ジョナゴールド」が最も多く生産されているが、酸味がやや多く、最近の消費者の嗜好にはやや合っていないことから、生産が急激に減少している。その一方、甘味が多く食感の良い、最近の消費者の嗜好に合致した中生品種の生産は増加している。国産リンゴ果実の生産・消費の減少に歯止めをかけるためには、糖度が高く肉質の優れる中生品種の数を増やし、消費者の嗜好に合った果実の出荷期間を拡大する必要がある。

農研機構では、こうした状況を受け、高温条件下でも濃赤色に着色しやすいだけでなく、甘味が多く歯ざわりも良い中生リンゴ「錦秋」を育成した。

この品種は着色しやすいため、東北地方南部以南の温暖なリンゴ産地でも外観の良いリンゴを容易に生産することができる。また、肉質が緻密で歯ざわりが良いことに加え、糖度が高く適度な酸味もあるため、食味も濃厚だ。

こうした特徴を持つ「錦秋」は、温暖なリンゴ産地でも着色と食味が良好な果実を容易に生産できることに加え、寒冷な産地でも果実肥大に問題はなく、糖度も十分に高くなることから、広範なリンゴ産地での普及が見込まれている。

 

 果実外観が優れ品質良好な早生品種

早生のリンゴは、気温の高い時期に果実が成熟する。このため、赤色品種の場合は高温により着色が阻害され、外観が不良になりやすいという問題がある。また、果肉の軟化が進みやすく、品種本来の食味になるまで樹上に置いておくと果肉が軟らかくなりすぎ、消費者の嗜好に合わなくなり商品性が低下するほか、収穫後の日持ちも悪いという問題が発生しやすい傾向がある。

特に、近年の地球温暖化に伴い、温暖なリンゴ産地では、早生の主力品種「つがる」において、こうした問題がしばしば発生しており、対策が急務となっている。

そこで、農研機構は、高温条件でも果皮が着色しやすく、かつ良好な食味になるまで樹上に置いておいても果肉が軟化しにくい良食味の早生リンゴ「紅みのり」を育成した。

この品種は、甘味と酸味のバランスが良く、早生品種としては果肉が硬く日持ちが良好。「つがる」と比較して果実の大きさや品種は同等で、2週間ほど早く収穫できる。

また、「紅みのり」は「つがる」で着色不良や果肉軟化が問題となっている東北地方南部以南の温暖なリンゴ産地を中心に普及が見込まれる。


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