千葉大学予防医学センターの鈴木規道准教授らの研究グループは、シックハウス症候群予防に向けて、全国の20〜70歳の男性3238名、女性1758名の計4996名を対象に、発生に関連する個人の要因や生活スタイルを調査した。その結果、女性や20代をはじめとする若年者、さらに喫煙歴のある人などが、シックハウス症候群を経験しやすい可能性が浮き彫りとなった。この研究結果により、住宅購入時の選択や生活スタイル等の改善でシックハウス症候群を予防できる可能性が示唆された。この研究結果は、Building and Environmentに6月17日にオンライン公開された。
カーペット、喫煙も要因に
COVID-19の影響で、高齢者や子供だけではなく、日中外で仕事をしていた人も家で過ごす時間が増えてきた。室内には多くの汚染物質があり、それらを吸い込んだりすることで起こる〝鼻のムズムズ・鼻水〟〝頭痛〟〝のどの乾燥〟〝目のチカチカ〟などさまざまな健康障害の総称を「シックハウス症候群」という。
症状の重さや頻度は人によって異なり、外気に触れることで症状が緩和するケースもあるため、そのまま過ごしてしまうケースが多くあり、アレルギー疾患増悪との関連を示す報告もされている。
研究チームは、時代や社会環境の変化により住環境や生活スタイルが大きく変わってきているなかで、あらためてそれらの変化に合わせたリスク要因に関する調査を行う必要があると考えた。シックハウス症候群予防に向け、発生に関連する個人の要因や生活スタイルを調べ、予防改善策の提案を行うことを目的に、この調査研究を進めた。
調査の結果、①女性や、若い人(60代と比べた場合、特に20 代)、②アレルギー既往歴がある人や、神経性が敏感な人、③喫煙歴がある人や、室内での喫煙、受動喫煙・副流煙注 4)を吸い込んでいる人―にシックハウス症候群を経験しやすい可能性が示唆されました。さらに、④床がカーペット敷き、ホコリを目にする部屋に居住している人もシックハウス症候群に罹患しやすいことも明らかとなった。
その上で、予防策として、症状を経験したことがある人は、「家族も含めて、室内での喫煙を行わない」「カーペットの使用を控える」「化学物質を低減した住宅の仕様を選択する」「室内でのホコリを目にしないような適切な掃除を行う」など、生活スタイルや住宅購入時の選択でシックハウス症候群を予防できる可能性が示唆された。
鈴木准教授らは、今後も継続的に調査を実施し、対象者の一部を追跡予定。また、温度、湿度、揮発性有機化合物、ダスト等の環境データの取得も検討しており、同研究で用いた質問調査と合わせ室内環境とシックハウス症候群に関する分析を実施する予定。