日本科学未来館(未来館、毛利 衛館長)は、3月29日から常設展3階「未来をつくる」のギャラリー、零壱庵(ゼロイチアン)の新展示「『AKIRA』の音 不朽のアニメ映画を彩る未知のサウンド」を公開する。映画「AKIRA」の音楽は、作曲家独自の制作手法とフィールドワークで収集した世界の民族音楽手法をもとに生まれ、「AKIRA」ならではの世界観を支えている。展示では、制作背景を展示映像で読み解き、高解像度の音体験を提供する。零壱庵は、アート作品を通して、科学技術とともに変わり続ける人の認識や社会について考えるギャラリー。
既存の映画音楽と異なる作品が成立
1988年公開の映画「AKIRA」は、大友克洋氏による漫画が原作のアニメーション作品。その舞台となる2019年の混沌としたネオ東京は、現在の東京と重なる部分がある。さらに緻密な筆致による画風は、その後の漫画やアニメ作品に多大な影響を与えた。また、山城祥二氏(芸能山城組主宰)作曲のサウンドトラックは海外で近年再発売されるほど人気。
「AKIRA」の音楽を制作した山城氏(本名:大橋力)は、自然科学者としてホモサピエンスのとるべきライフスタイルとは何かを探る研究を行いながら、音楽の専門教育を受けないまま芸能山城組を創立して音楽活動を展開してきた。活動の中で大友監督からの依頼を断り切れず、映画音楽を勉強しながら制作することになる。
この映画音楽の制作のため〝サウンドモジュール〟という方式を考案。世界中のさまざまなコミュニティを巡るフィールドワークで実際に体験した音(声や民族楽器など)を使い、既存の映画音楽とは異なる作品が成立した。
6台のスピーカーでサラウンドを体感
「AKIRAの音」展では、作曲家という立ち位置だけでなく研究者の視点ももつという、従来にない観点による音楽制作の背景を展示で読み解く。展示内では、映像制作・堀田英仁氏、アートディレクション、デザイン・安田昂弘氏の指揮のもと、3面にプロジェクターで投影する映像によって制作背景を紹介。山城氏自身が設計した可聴域以上をも再生可能な6台のスピーカーによるサラウンドの音を体で感じることができる。未来館では、「ぜひ高解像度の音体験をお楽しみください」と多くの来場を呼び掛けている。