東京大学、東京工業大学、慶應義塾大学の3大学研究室は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)、衛星データビジネススタートアップ企業「㈱Synspective」とともに、内閣府主導による革新的研究開発推進プログラム「ⅠmPACT」の一つである『小型合成開口レーダー衛星システムの研究開発』の成果を応用した小型SAR衛星の初の画像取得に成功した。民間小型SAR衛星(100㎏級)による画像取得は、わが国初の快挙。衛星の商用化に向けて、大きな一歩を踏み出したこととなる。
災害観測、世界どこでも2時間以内
今回、東大などとともに画像取得に貢献した㈱Synspectiveは、小型SAR衛星の開発と運用、さらに高頻度観測を可能とする衛星群を構築。衛星から得られるデータの販売などを行っている。
同社初となる実証衛星『StriⅩ-a』が、昨年12月15日にニュージーランドのマヒア半島から打ち上げられ、予定通りの軌道に投入。その後、順調に運用を開始し、今年2月8日に初画像の取得に成功した。
今後は2023年までに6機、2020年代後半には30機のコンステレーション(衛星群)構築を目指す。低軌道を周回する30機の衛星群により、世界のどの地域で災害が発生しても、2時間以内に観測することが可能となる。
商用化実現へ小型化、コスト削減
マイクロ波を使って地表面を観測するSAR衛星。日本語では合成開口レーダー衛星と言われており、①雲を透過する、②夜も使用できる―など、高いポテンシャルを有している。一方で、商用化を進めるためには、小型化・軽量化とともに、コストの削減が不可欠となる。
慶大の白坂成功氏をプロジェクトマネージャーとするⅠmPACT事業では、独自方法で大型アンテナの超コンパクト収納を実現。同時に、従来の20分の1程度と、SAR衛星の世界トップレベル小型化にも成功した。
小型化とともに商用化を進める上で重要なのは製造コスト。従来100億円以上だったものを、5億円以下にまで削減。通常の20分の1以下と大幅な削減を図ることで、多数機配備による全地球規模・高頻度観測が可能となった。