地震調査研究推進本部地震調査委員会は、ある地点が一定期間に地震により強い揺れに見舞われる確率や、特定の断層で地震が起きた場合の周辺の揺れの強さなどを評価した「全国地震動予測地図2020年度版」を公表した。日本海溝沿いのプレート間巨大地震や南海トラフ沿いで発生する大地震について従来よりも震源域の多様性を考慮したモデルとするなど、より現実に沿った内容となった。
同委員会は、2005年公表の「全国を概観した地震動予測地図」から、国民の防災意識の向上や効果的な地震防災対策を検討する上での基礎資料として活用されることを目的に、地震動予測地図を更新し公表してきた。
近年では、2011年東北地方太平洋沖地震(2011年3月11日・マグニチュード9.0)の発生を受けて指摘された確率論的地震動予測地図の諸課題のうち、特に大規模・低頻度の地震を考慮するための検討等に重点的に取り組み、その成果をまとめて、2014年12月に「全国地震動予測地図2014年版~全国の地震動ハザードを概観して~」を公表。その後も、活断層や海溝型地震の長期評価の更新により得られた知見に基づいて、全国地震動予測地図を更新し、公表してきた。
2019年2月には「日本海溝沿いの地震活動の長期評価」、2020年1月には「南海トラフ沿いで発生する大地震の確率論的津波評価」が公表されたことから、この間に得られた新たな知見に基づいて全国地震動予測地図を更新し、今回、「全国地震動予測地図2020年版」として公表した。
都道府県別の地震動予測地図を掲載
2020年版では、○日本海溝沿いのプレート間巨大地震や南海トラフ沿いで発生する大地震について従来よりも震源域の多様性を考慮したモデルに変更○震源断層を予め特定しにくい地震のモデルの改良(東北地方太平洋沖地震後の地震活動の考慮など)○地下構造モデルの改良○地震発生確率の評価基準日変更(2020年1月1日)○地震動予測地図の配色の変更○地方別・都道府県別の地震動予測地図の掲載―等を行った。
今後30年間に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率」の地図では、北海道南東部や仙台平野の一部、首都圏、東海~四国地域の太平洋側及び糸魚川-静岡構造線断層帯の周辺地域などの確率が高いと指摘。
また、前回の2018年版に比べて、⑴東北地方や関東地方北部の太平洋側では、東北地方太平洋沖地震後の地震活動を考慮したことにより確率が増加するとともに、⑵関東地方では、増幅率の計算に用いる浅部地盤構造モデルを改良したことにより確率の増減がみられた。さらに、⑶山梨県・静岡県・長野県東部では、南海トラフ沿いで発生する大地震の震源域について従来よりも多様性を考慮したことにより確率が減少した。
2020年度版は、同本部ホームページで閲覧可能。