コロナ患者の手術は診断後7週間目以降が妥当―。関西医科大学教授らの国際研究チームは、新型コロナウイルス感染症感染者の手術リスクを、世界116ヵ国1674病院の約14万万人の研究データから明らかにした。陽性診断後6週間以内にオペを行った場合と、それ以降に実施したケースとでは2.5倍以上の術後死亡リスクがあることを突き止めた。コロナ感染者の手術は少なくとも7週間延期することを推奨している。
この事実を解明したのは、関西医科大が科学講座の里井壮平診療教授と、埼玉県立小児医療センター麻酔科の藤本由貴医師、米国ウェイン州立大小児科の黒田直生医師らの国際研究チーム。
英国バーニンガム大が中心となって結成された研究グループによる国際共同研究の結果で、全世界2万5000人以上の外科医と麻酔医が協力。米英をはじめ、オーストラリア、ブラジル、中国、インド、UAE、日本など世界116ヵ国1674病院の14万727人の臨床データを分析し、明らかにした。
死亡率、0~2週:4.0%→7~8週:1.5%に
新型コロナに罹患していない患者の調整後30日死亡率は1.5%で、罹患患者の手術例では診断後0~2週目手術群(4.0%)、3~4週目手術群(同)、7~8週目(1.5%)という結果が判明した。また、この傾向は、年齢層や病状の重症度、手術の緊急性、手術のグレードの違い、選択的手術の感度解析などが異なっていても、変わらないという。
また、診断後7週間以上コロナ感染症状が継続した患者の死亡率は6.0%。症状が消失した患者(2.4%)、無症状の患者(1.3%)と比較しても有意に死亡率が高い結果となった。
世界中で猛威を振るっている新型コロナウイルス感染症については、一人ひとりの属性や置かれた状況に関係なく感染が拡大しており、手術が必要な患者も例外ではない。手術中のコロナ感染だけでなく、感染状態で手術を行った場合に死亡率が上昇することは、疫学的に証明されている。
国際的なガイドラインでは養成患者の手術は遅らせることを推奨しているが、判断根拠や最適な延期期間に関するエビデンスはほとんどなかった。結局は、現場の外科医が手術を擁する疾患の進行や状態と、コロナの症状を見ながら個別に判断するしかないというのが現状。今回の調査結果は、こうした状況に対するひとつの光明になることが期待される。