国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「地熱発電技術研究開発」の一環で東芝エネルギーシステムズ㈱は、「ビッグデータ解析技術を活用したトラブル予兆診断技術」を適用したシステムの実証実験を2019年10月から2021年2月までインドネシアのパトハ地熱発電所で行った。その結果、トラブル発生率を導入前に比べて20%以上抑制できる予兆診断システムを完成させた。稼働停止回数と停止期間の縮減により、発電量の増加、さらには発電コストの低減が可能となる
再生可能エネルギーの導入拡大が国内外で望まれるなか、地熱発電は天候や昼夜を問わず安定的に発電できるベースロード電源として注目を集めている。特に日本は世界第3位の地熱資源ポテンシャルを有しており、地熱発電技術の開発に大きな期待が寄せられている。
一方で既設の地熱発電所では、発電設備の老朽化や地熱タービンに付着した蒸気成分(シリカスケール)の除去作業による稼働停止などにより、暦日利用率が60%程度と低い状況。今後、発電コストの低減を実現し、地熱発電の導入拡大を図るためには、地熱発電所の利用率の向上が喫緊の課題となっていた。
このような背景から、NEDOは2013年度に立ち上げた「地熱発電技術研究開発」事業を発展させ、地熱資源の利用拡大につながる技術開発を実施してきた。そのテーマの一つである「地熱発電所の利用率向上に関する研究」(2018年度~2020年度)で東芝エネルギーシステムズ㈱が、2019年10月から2021年2月までインドネシアで地熱発電所の利用率向上に向けてIoT・人工知能(AI)技術を適用した地熱発電所のトラブル予兆診断システムの実証実験を実施した。
この実証実験では、NEDO事業で2018年から東芝エネルギーシステムズ㈱が開発してきた「ビッグデータ解析技術を活用した予兆診断技術」を適用したシステムを現地国営地熱発電会社であるPT Geo Dipa Energi(Persero)(ジオ・ディパ・エナジー、GDE社)のパトハ地熱発電所(ジャワ島西部バンドン郊外、2014年に運転開始、定格出力は6万kW)の発電設備に設置。トラブル予兆検知の可能性を評価するとともに、システムの導入による効果の実証実験を行った。
同システムでは発電所の運転データをリアルタイムで解析できる。さらに、情報通信技術(ICT)を活用してGDE社の本社や東芝エネルギーシステムズ㈱の各拠点で解析結果を共有でき、トラブル回避のための対応検討などに利用可能。
今回、こうした取り組みを通じて、システム全体でのトラブル予兆診断技術の有効性を検証した結果、トラブル発生率を導入前に比べて20%以上抑制できる予兆診断システムを完成させた。これにより、稼働停止回数および停止期間の縮減が見込まれ、発電量の増加とそれに伴う発電コスト低減につながります。国内の地熱発電所に導入されれば、さらなる地熱発電の導入拡大が期待される。