2021年10月8日 【順天堂大】花粉症の多様な症状を層別化する手法を開発 スマホアプリ用いたビッグデータ解析

順天堂大学大学院医学研究科眼科学の村上 晶教授、猪俣武範准教授らの研究グループは、スマートフォンアプリケーション(スマホアプリ)『アレルサーチ®』によるクラウド型大規模臨床研究により花粉症のさまざまな症状と特徴を検証した結果、花粉症の多様な症状を10群に層別化する手法の開発に成功した。この手法により、花粉症の症状に応じて層別化することで、個々人に対する早期の花粉症予防や効果的な治療につながる可能性がある。この研究はアレルギー免疫分野の医学雑誌Allergyのオンライン版に掲載された。

花粉症は国内で約3000万人が罹患する最も多い免疫アレルギー疾患で、患者数の増加が続いている。また、花粉症は医療機関への受診が多い疾患の一つで、医療費の増大に影響した。花粉症の症状は生活の質や労働生産性の低下に繋がる。

花粉症はアレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、花粉皮膚炎等を起こし、症状は多臓器にわたる。さらに、発症年齢、経過、重症度、治療への効果、予後などは一人ひとりによって異なる。また、乳児期にアトピー性皮膚炎として発症し、小児期に食物アレルギー、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎等を次々と罹患する、いわゆるアレルギーマーチが起こり、小児期から成人期まで対応する診療科が変遷する。

ところが、これまで花粉症を対象とした複数の診療科における横断的・縦断的な有機的診療連携は未だ達成されていない。このため、多臓器にわたる多様な花粉症の症状に対し、最適化された花粉症診療が進まないことが課題となっている。

さらに、花粉症の原因は、花粉や大気汚染物質等の環境要因、食事・喫煙・運動等の生活習慣、家族歴・年齢等の疫学的要因等が複合的に関連している。

このため、花粉症の病態理解と診療の質の向上には、それぞれの日常生活圏での花粉症に関する包括的なデータを収集分析し、個々人にとって最適化された花粉症対策を行う必要がある。そこで、この研究では花粉症の多様な症状の層別化を目的に、花粉症研究用スマホアプリで収集した大規模なクラウド型データを検証した。

今回の研究では、Apple社のResearchKitを利用したiPhoneアプリ「アレルサーチ®」を対象期間中(2018年2月1日~2020年5月1日)にダウンロードし、同意を得た研究参加者1万1284名を対象とした。花粉症の多様な症状は、5項目の鼻症状スコア、4項目の非鼻症状スコアを用いて分類。収集したデータを解析したところ、1万1284名の研究参加者のうち、80.1%(9041名)に花粉症の既往を認められた。

さらに、花粉症の多様な症状を、次元削減アルゴリズムUMAPを用いて検証を行ったところ、10群のクラスターに層別化することに成功した。さらに、階層型クラスタリングを用いて層別化された各クラスターの鼻症状スコアと非鼻症状スコアを視覚化した。

このように花粉症の多様な症状が層別化ができるようになると、各クラスターそれぞれに対する予防や治療戦略を組み立てることができるようになる。

この研究により、花粉症の多様な症状を層別化してその特徴を視覚化することに成功し、スマホアプリから個々人の花粉症症状を収集し検証することで、花粉症の予防や効率的な治療につながる可能性がある。


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