順天堂大学は、グローリー㈱と日本アイ・ビー・エム㈱と共同で研究開発してきた認知機能推定AIを金融取引業務で活用する日本初の「金融商品適合性チェック支援AIアプリ」を開発し、3月1日に三菱UFJ信託銀行㈱でパイロット運用を開始した。今後、このAIアプリを他の金融機関に展開していくことも検討する方針。
超高齢社会では、歳を重ねても豊かで安心した生活を送るための健康管理や資産形成サービスが求められているが、認知や判断などの能力は加齢と共に低下する傾向があり、金融商品取引は、その影響を配慮したサービスが課題となっている。
また、業界団体のガイドラインでも、記憶力・理解力等の認知機能等に応じた顧客対応について言及されるようになった。現段階では金融商品取引に関わる認知機能をデジタル技術のみで自動的に判断する方法は一般に確立されていないが、重要な参考情報としてデジタル技術等を活用する可能性が期待されている。
こうした状況に対応していくため、2018年から順天堂大は累計600症例以上にわたる認知症をはじめとした脳神経疾患患者や健常者への臨床試験を実施。その結果をもとに、グローリー、日本IBMと共同で会話や表情から脳の認知機能レベルを推定するAIを共同で開発してきた。
AIには、IBMのWatsonやデータ解析技術と、グローリーの表情解析技術が用いられている。さらに今回、認知機能推定AIを活用した金融商品取引業務の支援に特化した「金融商品適合性チェック支援 AIアプリ」を構築した。
認知機能を推定するAIは市場に複数あるが、金融業務に特化したソリューションとして開発されたAIアプリは、日本国内では初の試みとなる。
AIアプリでは、タブレットで撮影した表情とAIとの会話から認知機能を15段階で推定し、金融商品の適合性判断を支援するための参考情報〝脳の健康度〟として提示。また、3月1日から三菱UFJ信託銀行で開始するパイロット運用では、パイロット運用に賛同した三菱UFJ信託銀行の顧客数十名を対象に、AIアプリを実際に使用してもらい、資産形成の相談に応じる金融機関の社員や顧客にとってのユーザービリティの評価・改善を行う。
順天堂大等では今後、AIアプリをさまざまな金融機関に展開することで、高齢者が「脳の健康度」に応じた安心・安全な金融商品取引を行える、人生100年時代の社会基盤の構築を目指すこととしている。