2021年5月18日 【順天堂大】コロナモニタリングシステムを構築 患者を遠隔でモニタリング

 

順天堂大学などの研究グループは、「新型コロナウイルス患者が自身で測定したバイタルサインを遠隔でモニタリングするシステム」を構築し、同システムによる測定値の信頼性が高いことを実証した。この研究成果により、新型コロナウイルス感染症の流行下で、医療スタッフが感染リスクの高いバイタルサイン測定を行わずとも患者の測定値を遠隔でモニタリングすることが可能となり、医療スタッフの負担軽減や安全性の確保に繋がる。研究論文はJournal of Telemedicine and Telecare誌のオンライン版で公開された。

患者とスタッフの接触減らす可能性

同システムの構築・実証を行ったのは、順天堂大大学院医学研究科循環器内科学の葛西隆敏准教授、保健医療学部デジタルヘルス遠隔医療研究開発講座の鍵山暢之准教授と、日本光電工業㈱荻野記念研究所の松沢航氏らの共同研究グループ。

新型コロナウイルス感染症の流行下で、医療スタッフの感染を防ぐシステム開発が急務となっている。従来、患者のバイタルサインは医療スタッフが患者の部屋を訪問して測定していたが、患者自身がバイタルサインを測定し、それを医療スタッフが遠隔でモニタリングするシステムを高い信頼性をもって運用することが可能になれば、医療スタッフと患者の直接的な接触を減らし、医療スタッフの負担軽減と感染リスクの低減につながると考えられる。

しかしながら、患者は訓練された医療スタッフではないため、血圧計、パルスオキシメータ、体温計などを使って測定するバイタルサインの信頼性に課題がある。そこでこの研究では、それらの値が診療に用うる信頼性があるかどうか検証した。

全員が10分間のレクチャーでマスター

研究では、はじめに新型コロナウイルス患者のバイタルサイン測定値を遠隔でモニタリングするシステムを構築するとともに、新型コロナウイルス感染が確定、または疑われて入院した患者が、体重・体温・動脈血酸素飽和度(SpO2)・血圧・脈拍・心拍を自分で測定した。

同時に医療スタッフも測定を行い、それらのバイタルサインの測定データと、ベッドの下に配置されたマットタイプのセンサーを使用して呼吸数を測定し自動的にクラウドにアップロード。これらの測定値が医療者による測定とどの程度一致しているのかを検証した。

昨年5月26日から9月23日までの間に、16人の患者が研究に参加して、全員が10分間のレクチャーによって使用機器の使い方をマスターすることできた。研究期間中に、3835回バイタルサインの測定データがクラウドにアップロードされ、患者自身が測定したバイタルサインの値と医療スタッフが測定した値は、すべてのパラメーターで一致した。

信頼性の指標となる一致の程度を示す級内相関係数(0.8以上で非常に良い相関と解釈される)は、収縮期血圧で0.92、拡張期血圧で0.86、心拍数で0.89、動脈血酸素飽和度(SpO2)で0.92、体温で0.83、呼吸数で0.90となった。いずれもp値は0.001以下。

これらの結果は、今回、構築した遠隔モニタリングシステムの測定値は高い信頼があること示しており、新型コロナウイルス感染症流行下の医療スタッフによるバイタルサイン測定値の代替として有効であることを実証している。


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