□ポイント■
〇順天堂医院の医療従事者を対象にワクチン2回接種後の新型コロナウイルス抗体検査を実施
〇ワクチン2回接種後の中和抗体産生の指標となるS抗体の産生量は年齢や性別で異なった
〇感染の既往の指標となるN抗体陽性率は、順天堂医院の医療従事者と地域住民の間に差異がなかった
順天堂大学医学部附属順天堂医院臨床検査部の井川ジーン技師、田部陽子教授、順天堂大安全衛生管理室内藤俊夫教授らは、医療従事者を含む順天堂大本郷・お茶の水キャンパスのワクチン2回接種を完了した職員2202人を対象に、新型コロナウイルス(SARS‐CoV‐2)抗体検査を実施した。その結果、新型コロナウイルスに対する中和抗体が産生された指標となるS抗体がほぼ全例で認められたものの、その産生量や減少の程度に年齢や性別で差があることが明らかになった。
一方、新型コロナウイルス感染既往の指標となる抗体(N抗体)の陽性率は、2020年より上昇(0.34%→1.59%)していたが、神戸市の一般住民対象の抗体陽性率の調査結果とほぼ同じレベルだった。
また、昨年の報告結果と同様に、感染リスクが高い医療従事者とその他の職員の間でN抗体の陽性率に差は認められなかった。
この結果は、適切なシステムの下で十分な感染防御対策を行っていれば、新型コロナウイルス診療の最前線で活動している医療従事者の感染リスクは一般人と同等であることを示した。
この研究結果は、英国科学雑誌「Scientific Reports」のオンライン版で公開された。
新型コロナウイルス感染症に対するワクチン接種が進み、ワクチン接種後にウイルスに対する中和抗体がどの程度産生されるかを知ることは感染予防に重要。年齢や性別が抗体の産生に与える影響や副反応の程度などが既に報告されているが、未だ十分な情報は得られていないのが現状。
加えて、症状を伴う感染だけでなく無症状の感染も拡大していると考えられ、感染の既往を示す抗体の陽性率を知ることも大切。そこで今回の研究は、ワクチン2回接種で抗体がどの程度産生されるか、前年と比較してどの程度の感染の既往者が増加するかを調べることを目的に実施された。