国立研究開発法人防災科学技術研究所と山梨県は、「富士山火山防災対策等の推進に向けた火山研究職員等の協力に関する協定」を締結した。防災科研と山梨県は、富士山火山防災対策で平常時および噴火時などの緊急時で、住民・観光客・登山者などの安全確保を目的とした火山防災に関する研究を遂行するため、火山研究職員の交流などの協力に関するもの。協定に基づき、富士山噴火に対する火山防災対策を進める。
富士山は、有史以来活発な噴火活動を繰り返し、降灰・溶岩流・火砕流・岩屑雪崩(がんせつなだれ)・火山泥流などの災害を及ぼしてきた。前回1707年(宝永4年)の宝永大噴火から300年以上が経過し、次の噴火と災害発生が懸念されている。特に日本の社会活動の中心である首都圏などへの影響も大きく、あらかじめ対策を講じることが必要。
富士山の火山活動に対して、防災科研では全国の陸域から海域までを網羅する「陸海統合地震津波火山観測網(MOWLAS(モウラス))」を運用することで研究観測を実施している。観測データは気象庁にもオンラインで提供され、24時間365日での監視にも貢献している。
火山観測による異常検知や火山活動の推移予測に関する知見を山梨県などの周辺自治体とも連携し、情報の伝達や災害対応に役立てることが重要。
防災科研は、1995年から富士山周辺に「基盤的火山観測網(V-net)」を整備し、現在6カ所の観測施設で、地震活動・地殻変動などの連続観測を実施している。特に富士山の地下15~25kmあたりで発生している深部低周波地震の解析を進め、火山活動の推移予測に役立てている。
また、富士山火山防災協議会富士山ハザードマップ(改定版)検討委員会と山梨県富士山科学研究所特別客員研究員に、職員1人がそれぞれ参画している。
防災科研と山梨県富士山科学研究所では、「火山災害の軽減に関する国際ワークショップ」を2003年から隔年で開催し、富士山の火山防災対策に関する協力を推進している。一方、山梨県は富士山を擁する自治体の一つとして、住民、登山客、観光客を対象に「安全を確保するための富士山噴火総合対策」で「富士山の火山活動と防災対策に関する調査研究」や「国の火山研究機関とのネットワークの構築」を掲げ、関連自治体・公的研究機関との連携対応を積極的に進めており、昨年には神奈川県と「火山噴火時の相互応援及び火山研究職員等の交流に関する協定」を締結した。