関西医科大学外科学講座の海堀昌樹診療教授、松井康輔講師、小阪久診療講師らの研究チームは、肝・胆道がんの診断・治療に新たな可能性を見出した。世界初の蛍光イメージング手法を開発するとともに、光線力学的治療効果も確認された。診断・治療面で新たな戦略に道を拓くこととなり、治療選択肢が拡大した。
海堀診療教授らは、ICG(インドシアニングリーン)蛍光イメージングの肝・胆道腫瘍治療への応用について、5-ALA(アミノレブリン酸)による蛍光イメージングを同時に併用することで手術前のCT/MRI検査でも発見できなかった微小な肝細胞がんを手術中に検出できることを世界で初めて突き止めた。
また、ICG-Lactosome(インドシアニングリーン ラクトソーム)は、マウス肝がんや胆嚢がん診断と光線力学的治療に有効であることも発見。将来の難治性肝・胆道がんに対する新たな治療法となる可能性に期待を寄せている。
そもそも、細かい血管が密集している臓器である肝臓の手術には高い安全性の確保が重要な課題となっており、その意味で今回の発見は、病変(がん組織)がどこまで広がっているかをリアルタイムで観察する術中イメージング技術の発展・向上に大きくつながるといえる。
この手法を用いることで術前に見つけきれなかった微小ながん細胞まで、術中にリアルタイムで観察・検出できるようになることから、すべてのがん細胞を切除することが可能になり、より根治性の高い手術の実現が期待できる。
この研究についてまとめた論文が、スイス連邦の科学誌「Frontiers in Oncology」(IF:6.244)に掲載された。