女性は男性に比べて「かゆみ」に敏感といわれているが、国立遺伝学研究所等の研究グループは、女性ホルモンの変動により「かゆみ」の感じ方が変わる仕組みを解明した。女性のかゆみ疾患の原因解明と治療法の開発につながることが期待される。
妊娠中や更年期などの女性ホルモンが変動する時期に、女性では「かゆみ」の感じやすさが変わることが知られている。しかしながら、かゆみの感じやすさが変わる原因はよくわかっていなかった。
今回、女性の「かゆみ」に向き合ったのは、情報・システム研究機構国立遺伝学研究所の高浪景子助教(前:岡山大学理学部附属牛窓臨海実験所)と岡山大学、京都府立医科大学、富山大学、佛教大学、カリフォルニア大学デイビス校の国際研究チーム。ラットを用いて「かゆみ」の感じ方が変わるしくみの解明に取り組んだ。
はじめに実験的に女性ホルモンのエストロゲンやプロゲステロンの濃度を変動させた雌ラットで、人為的にかゆみを誘発させた。すると、かゆみ感覚の指標になる「引っ掻き行動」がエストロゲンの存在と関係することが明らかとなった。
続いて、エストロゲンが〝かゆみ情報〟をどのような神経伝達機構を介して皮膚から脳へ伝えるのか調べた。その結果、エストロゲンが脊髄において「ガストリン放出ペプチド(GRP)受容体」神経を活性化することで引っ掻き行動を制御することが浮き彫りとなった。この研究成果によって、女性ホルモンのエストロゲンが脊髄のGRP受容体を介して、かゆみの感じ方を変えていることを世界で初めて明らかにした。この研究成果は、女性のかゆみ疾患の原因解明と治療法の開発につながるものと期待される。