2022年5月9日 【近畿大】超小型人工衛星打ち上げプロジェクト 近大生が組み立てた「宇宙マグロ1号」が宇宙へ

□ポイント■

〇超小型衛星「宇宙マグロ1号(SpaceTuna1)」を年内に打ち上げ

〇衛星に取り付けた再帰性反射材シートに地上からレーザーを照射し、反射特性を取得

〇学生の手で衛星開発を行うことで、継続的な〝宇宙人材〟の育成目指す

 

 

近畿大学理工学部電気電子通信工学科の前田佳伸准教授、同理学科物理学コースの信川久実子講師らの研究グループは、㈱エクセディ(大阪府寝屋川市)と共同で、10㎝角の超小型人工衛星『宇宙マグロ1号(SpaceTuna1)』を開発した。5月上旬に宇宙航空研究開発機構(JAXA)へ引き渡し、ロケットで国際宇宙ステーション(ISS)に運ばれた後、「きぼう」日本実験棟から放出予定。

『宇宙マグロ1号』は、衛星に搭載した再帰性反射材シートに地上からレーザーを照射。地上・衛星間を往復した反射光を地上で受光することにより、宇宙空間における反射材の特性を調べる。

『宇宙マグロ1号』には、近畿大と日本カーバイド工業㈱(東京都港区)が共同開発した反射特性を最適化した再帰性反射材シートを装着している。再帰性反射は光源からの光が再び光源方向へ帰る現象。地上から約400㌔離れた地球周回軌道上の『宇宙マグロ1号』にレーザーを照射し、反射強度の基礎データを実測する。

近畿大と共同研究を行なう国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)宇宙通信システム研究室協力のもと、同研究室の光地上局の大型望遠鏡から、衛星に向けてレーザーを照射し、望遠鏡の受光器で反射光を観測する。人工衛星は地上に対して秒速約8㌔で移動しているが、NICTの望遠鏡設備は高速追尾が可能。

打ち上げから約1年の運用期間中は、レーザー照射を定期的に行って反射光強度の経年変化を測定し、宇宙空間での再帰性反射材の劣化具合をモニターすることで、再帰性反射材の宇宙耐性を調査する。

また、レーザー照射のためには衛星の軌跡を知る必要があることから、『宇宙マグロ1号』には青色LEDを搭載し、その光を地上の望遠鏡で探索することで、衛星の位置を特定。LEDの点灯周期はドミソの3和音の周波数に設定しており、周波数解析によって『宇宙マグロ1号』であることが特定しやすくなる。

登山者の遭難救助への応用可能

この研究は、持続可能な宇宙事業開発への貢献を目指すもので、再帰性反射材によるレーザー反射の技術を応用すれば、スペースデブリ(宇宙ゴミ)の回収に役立つことが期待される。例えば、あらかじめ衛星に再帰性反射材を取り付けることで、衛星がデブリ化した場合も、地球や他の健全な衛星からレーザー照射をすることで、デブリ衛星の詳細な位置が測定でき、回収に貢献する。

また地上では、登山者が再帰性反射材を装着することで、万一遭難した場合も上空からの探索が容易になり、遭難救助システムにも応用可能となる。

『宇宙マグロ1号』は、学生の〝超小型衛星を作りたい〟という強い思いから始まったプロジェクトで、学生が自らの手で組み立てて衛星を完成させた。近畿大での継続的な「宇宙人材」育成のため、2機目の超小型衛星の開発を目指しており、近畿大の工学分野の研究者と宇宙科学分野の研究者が協力し、地球大気の測定や天体観測を行える超小型衛星を開発・打ち上げることで、SDGsへの貢献や宇宙の謎の解明に寄与する方針だ。

 


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