近畿大学医学部病理学教室の伊藤彰彦主任教授ら研究グループは、青森県で栽培されたタデ藍の葉から抽出した「あおもり藍葉エキス」が、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質のヒト細胞受容体への結合を阻害することを発見した。あおもり藍葉エキスは、1万倍以上に希釈しても阻害効果を発揮することから、人体に安全な濃度でも使用可能。新型コロナウイルスのヒト細胞への侵入を防ぐことに繋がり、新型コロナウイルス感染予防に役立つことが期待される。
この研究成果は、伊藤主任教授をはじめ、東北医科薬科大学薬学部生薬学教室の佐々木健郎教授、富山大学学術研究部 医学系(計算創薬・数理医学講座)教授・神戸大学大学院(兵庫県神戸市)医学研究科客員教授の髙岡 裕氏ら。
この研究に関する論文は2月10日に、実験医学・実験薬学分野の国際的な学術誌「Experimental and Therapeutic Medicine」に掲載された。
新型コロナウイルスがヒトの細胞に侵入する際、ウイルス表面のスパイクタンパク質がヒト細胞表面にある受容体に結合することが最初のステップとなる。そこで、近畿大医学部を中心とする研究チームは、スパイクタンパク質と受容体の結合を阻害する成分の発見をめざして研究を行った。
はじめに体内でのウイルスの結合を再現する細胞の実験系を樹立し、スパイクタンパク質を蛍光標識することで、細胞に結合したスパイクタンパク質の量を測定できる手法を確立した。
次にさまざまな天然物や化合物を、スパイクタンパク質と同時に細胞実験系に添加したところ、青森県で農薬不使用で栽培されたタデ藍の葉から抽出した「あおもり藍葉エキス」を使用した際に、受容体に結合するスパイスタンパク質の量が減少することが分かった。
この結果から、あおもり藍葉エキスが、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質が受容体へ結合するのを阻害する、ということが明らかになった。
また、このエキスを1万7300倍に希釈しても阻害効果が確認できたため、人体に十分安全な濃度で使用可能で、この研究の成果を新型コロナウイルスへの感染を予防する点鼻薬などに役立てることが可能と考えられる。