2021年11月16日 【近畿大】妊婦の6人に一人がコロナ禍で心理的苦痛 感染症への恐怖感だけでなく孤独感が関連

近畿大学東洋医学研究所の武田 卓所長を中心とする研究チームは、わが国の妊婦が、深刻な心理的苦痛(SPD)を高率に感じており、その原因として感染症への恐怖感だけでなく、孤独感が関連していることを明らかにした。

この研究論文は11月11日4:00に、女性ヘルスケア領域のトップレベルのジャーナルである「International journal of women’s health」にオンライン掲載された。この研究は、「〝オール近大〟新型コロナウイルス感染症対策支援プロジェクト」の一環として実施された。

新型コロナウイルス感染症は、世界中の人々の身体面・心理面に大きな影響を及ぼしている。そのなかでも妊婦は、感染した場合に胎児・新生児への影響も懸念されるため、心理的ストレスが非常に大きいと想定される。

また、孤独感は心身へ悪影響を及ぼすことが知られており、高齢化社会や社会不適合と関連して世界的な問題となっているが、わが国では、少子化や核家族化等の社会的変化により、妊婦が孤立しやすいと指摘されている。

さらに、感染予防による社会活動の制限によって、妊婦の孤独感は以前よりも増していると想定される。しかし、これまで妊婦における心理的苦痛と新型コロナウイルス感染症に対する恐怖感、孤独感の関連は明らかにされていなかった。

今回の研究では、心理的苦痛の重症度と孤独感との関連性を明らかにするため、調査を実施した。今年6月から7月に、妊娠女性1022人を対象として調査したところ、⑴16.5%(169人)がSPD症状を示すこと、⑵心理的苦痛は、東日本大震災直後や令和2年(2020年)10月の先行研究の調査結果と比較して増悪したこと、⑶SPDのリスク因子としては、若年者、流産・中絶既往、非雇用に加え、新型コロナウイルス感染症への恐怖感だけでなく、孤独感があげられること―の3点が明らかとなった。

コロナ禍での心理的ストレスは、精神面への影響は注目されるようになってきたが、妊婦の孤独感との関連性はこれまで検討されていなかった。パンデミック初期の検討からは、孤独感と自殺念慮との関連性が報告されており、深刻な心理的苦痛は自殺の明らかなリスクとなる。

さらに、妊娠中のストレスは、産科合併症の増加や子供の発達に悪影響を及ぼすことが知られている。

妊婦は特にストレスに対して脆弱であることを考えると、今回の調査で明らかとなった高率のSPDや持続するコロナ禍での心理的苦痛の急激な増悪に対して、医療従事者や保健関係者は特別な注意を払う必要があるといえる。


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