2022年4月14日 【近畿大】南部鉄器を日本の文化として持続的に製造するために鉄の溶解にバイオリサイクル燃料「バイオコークス」の導入をめざす

■ポイント□

〇南部鉄器の製造工程で鋳鉄を溶かす際にバイオリサイクル燃料「バイオコークス」の使用を検討

〇環境に配慮し、CO2削減でSDGs達成にも貢献しながら、南部鉄器を持続的に後世に残すことをめざす

〇南部鉄器の工房でバイオコークスを使用した鋳造の実証試験を実施

 

 

1848年創業の南部鉄器工房である株式会社及富(岩手県奥州市)は、近畿大学の技術協力のもと、南部鉄器の製造工程で鋳鉄の溶解に燃料として使用している石炭コークス(石炭を高温で乾溜させた燃料)の一部を、近畿大開発のバイオリサイクル燃料「バイオコークス」に置き換える試験を計画している。

環境に配慮し、COを削減することでSDGs達成にも貢献しながら、岩手県の伝統的工芸品であり日本が誇る文化である南部鉄器を持続的に後世に残すことをめざして取り組む。

4月15日㈮に㈱及富の工房で、燃料の一部をバイオコークスに置き換えて鉄を溶解し、南部鉄器を製造する実証試験を実施する。

南部鉄器の製造工程では、鋳鉄をコシキ炉(小規模キュポラ)で溶かす燃料として、石炭を高温で乾溜させた「コークス」を用いている。南部鉄器業界でも、環境への配慮、SDGs達成への貢献が課題となっており、CO排出削減に取り組む必要性を感じているが、電気炉など設備の入れ替えにはコストがかかり、なかなか実現できない現状がある。

㈱及富では、バイオコークスのキュポラ溶解の経験があり、岩手大名誉教授で水沢鋳物工業協同組合技術アドバイザーでもある堀江 皓氏に監修・指導を依頼し、この課題に取り組んできた。今回、近畿大が開発した「バイオコークス」を石炭コークスの代替燃料として導入するためのコシキ炉実証試験を検討している。

バイオコークスは、カーボンニュートラルな次世代エネルギーとして注目されており、今回の実証試験では、「リンゴの絞りかす」と「樹皮」を1:9の割合で原料として日本砿研株式会社(青森県黒石市)が製造したものを使用する。コシキ炉に入れる燃料の10%をバイオコークスに置き換え、溶かした鋳鉄で急須の蓋を鋳造する予定。バイオコークスを使用することで、CO2排出量の削減と硫黄の減少による不良低減効果をはじめ、鋳鉄の高強度化、薄肉軽量化も期待される。


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