■ポイント□
〇生育情報を自動収集する生育センシングシステム
〇収穫日を将来的に高い精度で制御可能
〇イチゴ農家の所得向上に期待
農研機構は、イチゴのジャストインタイム生産の実現に向け、イチゴの生育情報を自動収集する生育センシングシステムを開発した。同システムと生育モデルやAIを活用した生育制御技術とを組み合わせることで、イチゴの収穫日を将来的に高い精度で制御することが可能になる。今後、イチゴの需要が高まる時期と出荷の最盛期を確実に合わせることで、イチゴ農家の所得向上が期待される。
農研機構は昨年4月に農業ロボティクス研究センターを新設し、最先端のロボティクス技術およびシステムインテグレーション技術の農業生産現場への展開を通じて、農業・食品産業分野における「Society5.0」の早期実現を目指している。
今回、同センターの研究成果として、イチゴのジャストインタイム生産(JIT生産))に向けた生育センシングシステムを開発した。同システムにより収穫日予測に必要な生育情報を自動で収集し、システムと生育モデルやAIを活用した生育制御技術とを組み合わせることで、イチゴの収穫日を将来的に高い精度で制御することが可能になる。
イチゴはわが国の最も市場の大きな野菜の一つだが、年間を通じて需要が大きく変動する。特に出荷の面では、クリスマス・年末年始の需要に出荷ピークを合わせること、イチゴが多く出回る時期では、切れ目ない安定出荷が求められている。
栽培管理に基づく出荷量の調整は、生産者の経験に基づき行われているのが現状。今後、生産者の減少が続くなかで、経験や勘に依存せず、生産者がデータに基づき判断できる、新たな生育制御技術が求められている。
同センターでは、生育を精密に制御し、果実の収穫日を需要期の求められた出荷日に合わせることができるイチゴのJIT生産システムの研究開発を進めている。今回開発した画像自動収集システム、開花認識AI及び果実温度認識AIから構成される生育センシングシステムにより、JIT生産に必要な生育情報を人工気象器で自動収集することが可能となった。
今後、ハウスでの検証を通じて、生産現場で利用可能なイチゴのJIT生産システムを構築することにより、イチゴの需要が高まる時期と出荷の最盛期を確実に合わせることが可能になり、イチゴ農家の所得向上が期待される。