2021年10月26日 【農工大】言語の多様性が生物多様性を維持

東京農工大学大学院農学研究院の赤坂宗光准教授、豪州クイーンズランド大学の天野達也博士(農工大グローバルイノベーション研究院・特任准教授兼任)ら世界中の60人の研究者が参加した研究プロジェクトは、日本語を含む英語以外の16の言語で公表された生物多様性に関わる41万9679報の査読付き論文をスクリーニングして得た1234報を定量的に評価した。

その結果、非英語で公表された科学的知見を活用することで、これまで英語で集約されてきた生物多様性の保全に関わる知見が劇的に拡大することを明らかにした。この成果は英語以外で公表された知見の価値の見直しにつながり、非英語論文を国際的に利用することで、世界的に生物多様性の保全が加速することが期待される。

非英語で公表された知見が極めて大きな役割

生物多様性の保全に関わる情報は、英語で公表された知見のみに頼ると地球上の限られた場所、特に欧州や北米でしか取得されていなかった。しかし、非英語で公表された知見を含めると知見の得られる地域が25%拡大した。さらに、国際自然保護連合(IUCN)が認識している生物種のうち、その種の保全策についての情報が得られている種は、英語で公表された情報のみに頼ると両生類191種、鳥類677種、哺乳類727種であったものの、非英語で公表された知見も考慮すると両生類200種、鳥類894種、哺乳類791種に大幅に上昇した。

また、実際に保全に関わる人々が科学的根拠に基づいた対策を講じる上で、非英語で公表された知見が極めて重要な役割を果たすことが期待されるが、非英語で公表された科学的な根拠は、中南米や日本を含む東アジアなどの生物多様性が豊かで保全が最も必要な地域に多く存在していた。この結果は、世界中で英語により公表された研究のみに注目が集まることで、人類が得ている知識を地球上の生物を守るときに十分に活用できていないことを意味する。

また、日本語を母語する多く研究者が感じているであろう、日本語で公表された知見が国際的には存在を認識されていないという感覚が、世界的に共通することを意味する成果であるとも捉えられている。


株式会社官庁通信社
〒101-0041 東京都千代田区神田須田町2-13-14
--総務部--TEL 03-3251-5751 FAX 03-3251-5753
--編集部--TEL 03-3251-5755 FAX 03-3251-5754

Copyright 株式会社官庁通信社 All Rights Reserved.