東京農工大学科学博物館では博物館5ヵ年計画にデジタル化によるリニューアルを据え、蚕糸学術コレクションのデジタルアーカイブ化に着手している。合同会社AMANE(金沢市)との連携協定事業として、「蚕織錦絵」のデジタル化とジャパンサーチへの公開を実施したが、第二弾として、「繭標本・生糸・真綿」の公開を行う。同大工学部に残された蚕糸科学領域の教材資料群が公開されることで今後、自然・人文科学領域横断型の研究発展が期待される。
特に今回公開する「繭標本」は農工大工学部の前身である東京蚕業講習所由来の教材資料群であり、世界各国の品種、国内品種が349点収蔵されている。
わが国蚕糸業の技術革新で、メンデルの法則の再発見直後の1906年に外山亀太郎が動物で初めてメンデリズムをカイコで実証し、同時に一代交雑種を提唱したことから、農家において交雑種の飼育が急速に普及した。
今回公開する資料は、同時代に東京蚕業講習所で品種改良の研究・教育に用いられた繭標本。デジタル公開により、国内歴史資料・文化財調査の手がかりとして、品種改良への遺伝学的知識の需要の過程を知る科学技術史的資料として、今後の研究活用が期待される。
デジタルアーカイブ公開に合わせ、6月24日から8月31日まで今回アーカイブ化した資料の一部を博物館内で公開する。