2022年9月7日 【豊橋技科大】最新AIによる自動運転~道路シーン解析と運転制御を同時に行う新たなAIが多様な環境での安全な自動運転を実現

豊橋技術科学大学情報・知能工学系 行動知能システム学研究室の三浦純教授らは、道路シーン解析と運転制御を同時に行う新たなAIモデルを開発した。このAIモデルは、カメラからの入力情報を解析して周囲の状況を認識すると同時に、進むべき経路を計算し、車を誘導します。本モデルは、標準的な自動運転シミュレーション環境での実験を行い、さまざまな状況下で安全な自動運転を行うことができ、他の最新の手法より優れた運転性能を示すことが可能となるもの。

モデル設計と学習での課題解決が必要

自動運転システムは、複数のシーン認識や運転制御処理を行う必要があり、一般に複雑なシステムとなる。まず個々の処理を実現し、それらを組み合わせるアプローチでは、個々の処理の調整や最適な組み合わせの探索が必要となり、システム開発に時間がかかる。

そこで、最新の深層学習技術を利用し、複数の処理を同時に学習するマルチタスク学習手法と、入力の画像データから出力の運転制御量を直接計算するEnd-to-end方式を用いた単一のAIモデルで自動運転を行う手法を開発した。提案手法では、複数処理の設計や組み合わせを考慮する必要はなく、また、学習は一つのモデルに対してのみ行うだけで済む。

このようなAIモデルの設計で課題となるのは、最終的に必要となる運転制御量の計算に役立つ情報をどのようにして得るか。そのためには、複数センサ情報を組み合わせて多様な情報を得るためのセンサフュージョン技術を利用するとともに、モデル中の周囲環境認識部が十分学習できるように多くのデータを与えることが基本的なアプローチになる。

しかしながら、大量のデータを扱うための計算量が増大することや、異なる形の情報を組み合わせるためのデータ前処理の設計が必要になること、さらに、複数種類の処理の学習をバランスよく進めることなど、モデルの設計と学習での多くの問題を解決する必要がある。

そこで、研究チームは、次のようなシーン認識部と運転制御部からなるAIモデルを提案した。シーン認識部は、一つのRGB-Dカメラから得られるカラー画像と距離画像を処理する。運転制御部は、シーン認識部の結果、及び車の速度と目標とする移動経路の情報を得て、運転制御量を計算。各部のバランスの取れた学習を行うために、修正勾配正規化法(MGN)というパラメータ修正手法を用い、シミュレーション環境上で収集された多数のデータを用いて模倣学習を行う。

作成したモデルのパラメータ数は他のモデルよりかなり少なく、性能の限られた計算機でも十分に機能する。

自動運転に関する標準的なシミュレーション環境であるCARLA環境で実験を行い、他の最新の手法に比べ、小規模のモデルであるにもかかわらず、高い運転性能が得られることを示した。また、カラー画像と距離画像を組み合わせて作成した鳥瞰地図を利用することで、運転に必要な情報をうまく取り出すことができ、運転性能に極めて有効であることも明らかとなった。


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