萩生田光一文部科学大臣は、新型コロナウイルス感染症ワクチン接種に医学部学生を活用することに関して、慎重な姿勢を示した。法律的には「実習」ということで接種の注射を打つことは可能だが、その場合、一定数の指導医を配置しなければならないことから、難しいと指摘。医療関係者に対して積極的な協力を求めることが現実的との考えを述べた。5月21日の閣議後会見で、記者からの質問に答えたもの。
文科省では、これまで医師、歯科医師、看護師について、附属病院を置く各国立・公立・私立大学長等に対して、仮に自治体からの新型コロナウイルスワクチン接種への協力依頼があった場合には、可能な限り協力を要請してきた。
接種者が医学生「躊躇する人も」
萩生田大臣は、「指導医の監督下での臨床実習以外では、医行為が認められていない医師の資格を有していない医学部生のワクチン接種について、大前提として、文部科学省から医学部に手配して学生をぜひ接種に活用してくれとお願いした事実はない」と説明。
一方で、「仮に医学生にお願いをする場合は、唯一、教育実習の一環としての接種は、法律上認められているわけなので、物理的にはもし可能だと思う」としつつも、「その場合は、例えば自治体で予約をした人が、突然会場に来たら、この会場は医学生の会場で、実習をやらせていただいていますと看板に書いてあったら、その場で躊躇する方が中にはいると思う」と分析。「仮に医学生を活用することになれば、かなり念入りなスキームを作らないと、国民は納得しないし、医学生に対しても申し訳ない」と話した。
また、医学生のワクチン接種に関する検討を進める場合には、医学生に直ちに静止介入ができる適切な一定数の指導医が必要になるので、結局〝打たない〟医師が何人も会場にいなければならないことになるのは本末転倒と指摘した。
さらに、ワクチン接種に関する医学生に対する研修が必要であるとともに、大学での臨床実習計画を見直さなければならないと問題点を列挙。医療事故が起きた場合の責任の所在など、課題を整理しなければならないと、医学部学生のワクチン接種への活用をすぐに進めることには、超えるべきハードルが多すぎるとの見方を示した。