東京大学は、北海道大、東京理科大、工学院大、宇都宮大、清水建設㈱、太平洋セメント㈱、増尾リサイクル㈱とともに、NEDOムーンショット型研究開発事業「C4S研究開発プロジェクト」を実施しています。2050年カーボンニュートラル社会の実現に大きく貢献することを目的とするもの。同プロジェクトでは、薄く大気中に広がって存在しているCO2と、全国各地に存在しているコンクリート構造物を資源とみなし、それらと水のみを原料として、カーボンニュートラルとなる次世代のコンクリートを開発している。このコンクリートは、何度でも繰り返しリサイクルが可能。東大大学院工学系研究科の野口貴文教授がプロジェクトマネージャを務めている。
人類活動由来CO2の5%がセメント生産
プロジェクトの一環として、東大大学院工学系研究科の丸山一平教授と野口教授らは、このカーボンニュートラルコンクリートの製造を可能とする製造技術の基礎を開発した。
従来、コンクリートの製造にはセメントが必要不可欠。しかし、セメントの生産時には石灰石の主成分である炭酸カルシウムの分解などによって多くのCO2が排出されており、人類の活動由来のCO2のうち、約5%がセメント生産によるものといわれている。
今回開発したコンクリートの製造技術は、化石の生成プロセスと同じように、砕いた使用済みコンクリートの粒子間に炭酸カルシウムを強制的に析出させて一体化させることに大きな特徴がある。
単位体積あたりに固定化されるCO2量は、等量のコンクリートが過去に排出したCO2量を上回る。
また、全国どこにでも存在しているコンクリートなどに含まれているカルシウム(Ca)と大気中のCO2と水とを原材料(資源)としているため、薄く分散した資源の遠距離回収を行う必要はなく、地産地消であることにも大きな意義がある。
さらに、このコンクリートは、将来にわたって何度でもリサイクルが可能なため、資源枯渇・廃棄物発生の問題も解消される。この研究成果は、今後の建設分野のCO2排出抑制に大きく貢献するとともに、将来、火星上でのコンクリートの製造にも応用できる可能性がある。