歯を失った高齢者の口腔機能を維持することは、健康で自立した生活を続けるためにも重要。東京医科歯科大学教授らの研究グループは、マウスピースを用いた簡易な噛みしめ訓練が咬合力や咀嚼筋性質を改善できることを示した。1ヵ月間の短期トレーニングで、咬合力向上に加えて咀嚼筋の一つである咬筋の肥大も認められた。歯科補綴治療が完了し、メインテナンス段階に入った高齢者に対する簡易な口腔機能セルフマネジメントの確立が期待される。
この研究を行ったのは、東京医歯大大学院医歯学総合研究科摂食嚥下リハビリテーション学分野の戸原玄教授、山口浩平特任助教、高野悟大学院生の研究グループ。
参加者は、介入群と対照群にランダムに分けられ、介入群、対照群いずれもマウスピースを装着した状態で、介入群は本気の食いしばりを10秒間行い、対照群は任意の速度で10秒間カチカチと噛むように指示された。
各運動間に5秒間のインターバルを設けて5回繰り返すことを1セットとして、1日2セット4週間継続。介入群は、最大咬合力、安静時の咬筋の厚み、収縮時の咬筋の厚みや質に有意な改善を認めた。
この結果、簡易に作成できるマウスピースを用いた噛みしめ訓練が、義歯を使用している高齢者に対して咬合力と咬筋量、質の改善に有効であることが明らかとなった。この研究成果は、国際科学誌 Scientific Reportsの3月31日オンライン版で発表された。