気象庁気象研究所、東京大学先端科学技術研究センター、東京大学大気海洋研究所の研究チームは、最新の季節予測モデルを用い、1年先の夏季アジアモンスーンの予測に初めて成功した。エルニーニョ現象及びその後の影響がよく再現されていたこと、また、大規模なアンサンブル予測を行ったことに起因していることを明らかにした。この研究成果は、4⽉7⽇付けで、国際科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ誌に掲載される。
アジア域の広域にわたる季節風(アジアモンスーン)の変動は、そこに暮らす人々の営みに大きな影響を与える。日本の夏の天候も、梅雨や台風などの活動を通して、アジアモンスーンの変動の影響を大きく受けており、長期予測の重要性は一層高まっている。
アジアモンスーンの変動は、大気・海洋・陸面といった気候システムの構成要素間での複雑な相互作用から生じており、数値シミュレーションで精度良く再現するのは容易ではない。さらに、気候システムの数値シミュレーションでは、予測期間が長くなればなるほど誤差が大きくなってしまうというカオス的性質がある。
半年程度先までの季節予測では、海洋や陸面などのゆっくりとした変動の予測を手掛かりに予測できる一方、それより長期の予測では、海洋等のゆっくりとした変動の予測もより難しくなるため、数値シミュレーションによりアジアモンスーンの活動を半年以上前に予測することは困難だった。
インド洋等の大気と海洋の相互作用が重要
ここ数年の研究によると、熱帯インド洋や熱帯太平洋では、先行するエルニーニョ現象の影響がエルニーニョ現象終息後の夏まで持続して現れること、また、このプロセスにはインド洋や西太平洋での大気と海洋の相互作用が重要であることが指摘されている。
東大先端研などの研究では、最新の季節予測モデルがこのプロセスを現実的に再現できること、さらに、それによってアジアモンスーンの予測が1年前から可能であることを示した。
これらの成果は、アジアの季節予測に関する理解をより深めるとともに、今後、季節予測技術の高度化および精度向上、季節予測の応用に向けた研究の発展に大きく貢献すると考えられるという。