大阪市立大学大学院医学研究科 医療の質・安全管理学の山口悦子准教授、稲田雄大学院生らの研究グループは、小児集中治療室での医療の質向上について記述した文献を調査し、質改善の論文数は経年的に増加しているものの研究報告の質は必ずしも高くないことを明らかにした。
小児集中治療室の「カイゼン」未だならず
わが国のものづくりにおける継続的質改善(KAIZEN)は有名だが、残念ながら医療分野での質改善の取り組みの報告は、欧米から遅れをとっているのが現状。小児集中治療室では、重症な患者に対して複雑な医療をタイムリーに行う必要があるため、質改善の必要性と効果は大きいと考えられる。ここ数年は研究報告も増えているが、これまでそれを系統的に評価した質の高い研究がなかった。
研究グループは、小児集中治療室で行われている医療の質改善研究の全容やそれらの研究報告の質を評価するため、0~16(満点)のスケールで採点し既存の文献の系統的評価を行った。
その結果、分析対象として採用した158件の質スコアの中央値は11.0で、質が高い(スコアが14~16)と判断された研究は17%、質改善の研究を報告するためのガイドライン「Standards for Quality Improvement Reporting Excellence」を引用していた論文はわずか5%に過ぎなかった。
この結果は、医療分野での質改善研究報告の質に改善の余地があることを示唆している。この研究成果は国際学術雑誌「Pediatric Critical Care Medicine」(IF(インパクトファクター)=2.854)にオンライン掲載された。